(画像はイメージです/PIXTA)

父から多額の遺産をひとりで相続した母は「長男にすべてを相続させる」という遺言を残して亡くなりました。納得できない長女でしたが、対抗措置である「遺留分の請求」ができることを知ったのは、なんと遺言書の検認から11カ月経過後。急いで兄である長男に内容証明を送りますが…。高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

母が残した、不平等すぎる遺言書

陽子さんは、世田谷に賃貸マンション(2.5億円相当)と自宅(1.5億円相当)、預金や株などの金融資産(1億円)を持っている資産家です。

 

夫の太一さんは10年前、遺産のすべてを陽子さんに相続させるという遺言を残して亡くなりました。陽子さんの資産の多くは、夫の太一さんから相続したものです。夫婦の子どもとして、長男の太郎さん、長女の花子さんがいます。

 

陽子さんは「長男の太郎さんにすべて相続させる」という自筆証書遺言を書いていました。

 

陽子さんが亡くなり、長男の太郎さんは遺言書の検認の申立てをし、花子さんには裁判所からの呼出状が来ました。花子さんは裁判所に行って遺言書の記載を確認すると、陽子さんの字で「陽子さんの財産は長男である太郎さんにすべて相続させる」と書かれており、日付も署名捺印もなされていました。

 

花子さんは、遺言書は不平等だと思いましたが、どうしたらよいかわからず、長男の太郎さんに文句も言えず、検認の日から11カ月経過してしまいました。

「〈遺留分の請求〉ができるらしいよ!」と息子が…

そんなある日、花子さんの息子で大学生の実君が「遺言書で全部相続させると書かれていても、遺留分を請求できる」というインターネットの記事を見つけました。

 

花子さんは、インターネットに出ている書式を見ながら内容証明郵便で遺留分を請求する通知を出しました。ところが、長男の太郎さんは不在で、その内容証明郵便を保管期間内に受け取らなかったために戻ってきてしまい、検認の日から1年が過ぎてしまいました。

 

花子さんは、遺留分を請求できるでしょうか。

 

①花子さんは、遺言の内容を知ってから1年以内に、内容証明郵便で遺留分を請求しているから、遺留分を請求できる。

 

②花子さんは、遺言の内容を知ってから1年以内に内容証明郵便で遺留分を請求しているけれども、相手に届かなかったことから、遺留分は請求できない。

 

③花子さんが、遺留分の通知を出す前に、電話で長男の太郎さんに遺産分割や遺言書が不平等であることを話していて、太郎さんが花子さんからの内容証明郵便を受け取ろうと思えば受け取れたなどの事情があれば、相手が内容証明郵便を受け取らなかったとしても、遺留分の請求が認められる可能性がある。

 

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