(画像はイメージです/PIXTA)

資産家の母親は、同居してくれた長女に感謝し、自宅不動産を相続させるよう遺言書を残し、亡くなりました。長女は相続手続きのため、兄である関西在住の長男に連絡したところ、なんと、業績不振で早期退職し、自宅に戻って暮らすといいます。長女は阻止したいと考えますが、仕事をなくした長男が生家で暮らす権利はあるのでしょうか? 高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

関西在住の兄「早期退職した。これから実家で暮らす」

陽子さんは、夫から相続した世田谷の自宅(1億5,000万円相当)に住んでおり、賃貸マンション(7,000万円相当)の賃料収入で暮らしています。預貯金等金融資産は3,000万円くらいあります。子どもに長男の太郎さん、長女の花子さんがいます。太郎さんは、関西の大学に行き、そのまま関西で就職し、奥さんと子どもと関西で暮らしていました。

 

花子さんは、ずっと陽子さんと世田谷の自宅で一緒に暮らしており、結婚して、夫と子どもも、陽子さんの世田谷の自宅で暮らしています。

 

陽子さんは、花子さんが自分の面倒をよく見てくれていることから、自宅の土地建物は花子さんに、賃貸マンションは太郎さんに相続させ、預貯金等は花子さんが3分の2、太郎さんが3分の1相続するという遺言を公正証書で作成しました。

 

その後、10年が経ち、陽子さんは老衰で亡くなりました。

 

四十九日が過ぎて、花子さんが遺言に基づく相続手続をしようと太郎さんに連絡をしたところ、太郎さんは、コロナ禍による勤務先の業績不振で早期退職をすることとなり、世田谷の自宅に戻ってくるというのです。

 

太郎さんの言い分は、世田谷の自宅には、いまでも太郎さんの部屋があるし、生まれ育った家なのだから住む権利があるというのです。会社をリストラされた兄を家から追い出す気なのかと太郎さんはいいます。

 

花子さんはどうしたらよいでしょうか。

 

①会社をリストラされた太郎さんは気の毒だから花子さんは太郎さんを家に住まわせなければならない。

 

②世田谷の自宅は、いまでも太郎さんの部屋があるし、生まれ育った家なのだから太郎さんには住む権利がある。

 

③世田谷の自宅は、遺言書により花子さんのものとなることが確定していることから、太郎さんには使用権がなく、花子さんは太郎さんが住むことを拒否することができる。

 

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