会社員なら、後輩や部下の指導を任されることは多いもの。しかし、相手が思うように覚えてくれない・動いてくれないとなれば、思わずカッと感情的になってしまうこともあるでしょう。しかし、怒りを相手にぶつけても、生産性が上がらないどころか、相手が心を閉ざす原因に…。脳神経外科医として活躍する筆者が、医師ならではの冷静な視点で、感情のコントロールの重要性を解説します。

失敗した人は自分の言い分を主張したくても、心情的に言い出しにくいということもありますので、相手が失敗したときこそよく耳を傾けることが大事です。威圧的な態度をとると言葉が出てきませんから、聞く側は「傾聴」を越えた「敬聴」くらいの気持ちでいることが大事なのです。

激しい怒りを感じたら、その場を離れ「クールダウン」

誰かが失敗したときというのは、ただでさえ現場も混乱していますから、「敬聴」するのは難しいと感じるかもしれません。人間ですから、ショックを感じた瞬間に怒りも感じてしまうのは仕方ないと思います。

 

だからこそ、それをコントロールする方法を身につけておかなければなりません。

 

6秒間待てば怒りが鎮まるなどといいますが、脳神経外科医からすると、怒っているときは脳の血流量が上がっている状態ですから、6秒待つくらいでは鎮まりません。

 

僕なら、まずはその場を離れて1回クールダウンさせます。

 

自分が失敗してショックを受けたときはまずは落ちつくことを考えるというのと同じことで、ヒアリングをする側もまず落ちつくことが大事です。

 

起こった失敗やトラブルに対して、とりあえずの対処をしたあとは少し時間をおき、当事者から「なぜそうなったのか」という言い分をじっくり聞くのです。

 

誰しもトラブルがあったときには感情的になってしまうのは仕方がないことですから、冷静になってから一緒に問題の背景を探っていくのです。場合によっては、1日や2日など、ある程度時間をおいてからでもいいと思います。

 

上に立つ人は、普段から「叱り」と「怒り」を混同させないように気をつけないといけません。

 

「怒る」というのは、自分の感情に任せて怒りを相手にぶつけることです。一方「叱る」というのは、自分の感情をコントロールしたうえで相手のためになるように注意することです。

 

怒られるのは誰でも嫌なことだと感じますが、叱られることは決して悪いことではないのです。

 

松下幸之助氏は「叱ってくれる人を持つことは大きな幸福である」(※)と言いましたが、僕も親や上司から叱られて成長してきました(なかには怒るばかりの上司もいましたが……)。

 

※『松下幸之助「一日一話」仕事の知恵・人生の知恵』PHP総合研究所編著 PHP文庫

 

相手はこちらがもっと良くなることを望んで注意を向けてくれているのですから、自分にとって必要なことだったと思っています。

 

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郭 樟吾

幻冬舎メディアコンサルティング

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