失敗を恐れては前に進めませんが、想定外の失敗をすれば、だれしも大きなショックを受けることになります。しかし、長い目で見ると失敗は悪いことばかりではありません。逆に、人生にとって大きな糧となる可能性も秘めているのです。厳しい医療現場に立ちながら、多数の人材育成を行ってきた脳神経外科医が、自分の経験をもとにアドバイスします。

失敗が成長しを促し、人生の幅を広げる

失敗には「次の成功のもとになる」というメリットがありますが、もう一つのメリットに「人生の幅が広がる」ということがあります。

 

人生の幅とは何かを一言で説明するのは難しいのですが、さまざまなものを受け止める柔軟性や豊かさなどを指します。現実を受け止める強さともいえます。

 

自分は失敗することなんかないと思い込んでいる人には、他人のしくじりは許せないかもしれませんが、しくじり経験の多い人なら、他人の失敗も共感とともに受け止めることができます。失敗したことによって成長し、人間としてのものの見方が広がることもあるはずです。

 

僕は受験のしくじりによって自分の身の丈を知ることができました。高校時代は周りの友達と一緒に遊んでばかりいて受験勉強にも身が入らなかったため、受験した学校すべてに落ちてもたいして落ち込みませんでした。まあしょうがないな、やっぱりそんなに世の中は甘くないよなという気持ちでいました。

 

もしもそこで、なぜかは分からないけれどラッキーで合格していたら、今よりずっと挫折に弱い人間になっていたはずです。そして、その気になれば俺は何でもできるなどという根拠のない自信を強めてしまったかもしれません。

 

でも一般的には失敗や挫折と見なされる浪人の期間には、僕にとって学べるものがたくさんあり、人生の幅が広がったのです。

 

当時、母は怒っていました。父は怒りませんでしたが「浪人は1回だけだ。もう1年、同じことをしていたら落ちるだろうから、自分でやり方を考えてみなさい」と言われました。

 

そこで自分のこれまでを振り返ってみると、母が信じるくらい、僕は「勉強するフリ」だけはうまかったのです。でも実際にはきちんと勉強していませんでした。結局、何のために勉強するのかという目的意識がはっきりしていなかったことに気づいたのです。

 

そこで自分の目的である「医師になる」をきっちり見直した結果、高校時代の友達とは距離をおき、受験勉強に専念できるようになりました。しくじりによって目的意識がはっきりしたのです。

 

この目的意識は社会に出てからも重要です。

 

自分が仕事をしているのは何のためかという目的意識がないと、目の前の待遇の良さに釣られて本意ではない会社に入ったり、何かあるとすぐに不平不満を言ったり、長続きしないなど主体的に動くことができません。学校でも会社でも、自分は何のためにここにいるのかということを考えておかなければいけないのです。

留年決定に烈火のごとく怒った母、一方の父は…

もう一つ、その後の僕には、考え方次第で逆境がプラスになる出来事がありました。

 

それは大学時代の留年です。出席日数が足らずに1年留年することになってしまったのですが、このときも母は烈火のごとく怒りました。浪人でも心配を掛けていたのですから当然です。

 

ただこのときも父は怒らず、こう言いました。

 

「友達が2倍に増えるな」と。

 

この意外な言葉に僕は、嘘だろ!? と思ったのですが、驚くことに実際は父の言葉どおりでした。

 

実は医師というのは、人とのつながりが大事な職業です。患者の症状が自分の専門である脳以外に原因がある場合もあります。だから、皮膚のことなら皮膚科医に、眼のことなら眼科医に知人や友人がいれば「ちょっとこの患者さんのことで教えてほしいんだけど」と気軽に聞くことができるのです。

 

その人数が2倍になったのです。僕の出身大学では医学部の1学年が約100人でしたから、約200人の同級生ができたということです。200人の横のつながりがあるため、その交友関係の広さは今では本当に役に立っています。

 

もちろん下の学年に落ちるのは恥ずかしいことで、やりづらいこともたくさんありました。当然、社交性や協調性も磨かないと友達として仲良くやっていけませんから、そういう部分も自然と磨かれたのではないかと思っています。

 

このように、一見重大な失敗に思えることでも考え方によって前向きな力に変えられるのです。

 

 

郭 樟吾

脳神経外科東横浜病院 副院長

 

 

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郭 樟吾

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