失敗しても「次の成功のもとだ」と考えてみる
失敗には「次の成功のもとになる」というメリットがあります。
なぜなら、失敗には必ず「理由」があるからです。
人生では時に「たまたま成功しちゃった」というケースはあり得ますが、事前にさまざまな可能性を想定して回避策をとっておけば「たまたま失敗しちゃった」ということはあまり考えられません。
人間には、たとえば「10万円をもらったときに感じる喜びよりも、10万円をなくしてしまったときのショックのほうが2.25倍も強く感じる」という〈損失回避の法則〉が働きますが(参照:『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?(下)』ダニエル・カーネマン著、ハヤカワ・ノンフィクション文庫)、10万円をもらったときより、10万円をなくしてしまったときのほうが明確な理由があるはずです。
10万円をもらうときには昇給や手当などの理由もありますが、くじの当選や遺産など、明確な理由のない偶発的な出来事もあり得ます。
しかし10万円をなくしてしまったときは、落としたのか、騙されたのか、何かで損失を出したのか、減給されたのかは分かりませんが、必ずそこには明確な理由がありますし、そこから得られる教訓があるはずです。
そして、失ったものや失敗には必ず理由があるということを理解していれば、そこから学び、次の成功につなげることができます。例えば、もしもあなたが今、良い営業成績が取れなくて悩んでいるとしたら、それは何かの結果であり、どこかに理由があるのです。ですから、その理由さえ突き詰めて修正することができれば、次は成功する確率が高くなります。
イノベーションや技術の進化に、失敗は不可欠なもの
トーマス・エジソンは発明王として知られていますが、1万回も実験を重ねた結果、ようやく電球を発明することができました。そんなエジソンは、記者に「あなたは1万回も失敗したのですか?」と質問されたとき、こんなふうに答えたそうです。
「私は失敗などしていない。うまくいかない方法を1万通り発見しただけだ」(※1)
※1 『トーマスエジソンの「ビジネスと人生を逆転させる魔法の名言集」』Al-Biz 出版著
エジソンは「うまくいかないこと」が起こっても、それを失敗だとは思わなかったのです。そもそも失敗という考えをもっていなかったのかもしれません。今の方法がうまくいかないことが分かったら、次の方法を試してみればいい。そうしていくうちに「うまくいく方法」が残る。そうすれば、失敗は失敗ではなく成功にたどりつくための有意義なステップになるのです。
エジソンがイノベーションや技術を進化させるために「うまくいかない方法の発見」が欠かせないものだと考えていたということがよく分かる言葉だと思います。
また、「現代のエジソン」と呼ばれることのあるイーロン・マスク氏も、イノベーションに失敗はつきものだと考えているようです。
イーロン・マスク氏は宇宙開発企業スペースX社の創設者にしてCEOであり、電気自動車企業テスラ社の共同創設者です。さらに、太陽光発電や脳神経科学開発にも積極的に関わっています。
そんな彼も順風満帆ではありませんでした。スペースXでは3回も打ち上げに失敗していますし、テスラでも電気自動車「ロードスター」の開発が難航して、掛かった資金は1億4000万ドル(約160億円)にものぼりました。しかし、彼は自己資金を使い果たして破産寸前に追い込まれ友人に借金をしても、挑戦を諦めませんでした。
彼はもともと、テスラは90%の確率で失敗するだろうと予測していたそうです。それなのになぜ電気自動車事業を始めたのか、BBCのインタビューでこのように話しています。
「すでに存在しているビジネスモデルをなぞれば、リスクを回避して、それなりに儲かる企業になることができる。しかし、世界的な規模での大成功は望めない。世の中の課題を見つけ、新しい手法でそれを解決する。それこそがイノベーションの真髄だ」
「失敗も選択肢の一つ。すべての物事が順調だったら、十分なイノベーションをしていないことになる」(※2)
※2 「Inc.」2016年1月15日掲載の記事「Elon Musk: Tesla and SpaceX Had Only 10 Percent Chance of Success.」
彼には失敗を恐れない前向きな姿勢があったのです。さらに彼は、重要なのは小さな失敗から学ぶことだと語っています。
そういえば、エジソンはこうも言っています。
「失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。勉強したのだと言いたまえ」(※3)
※3『トーマスエジソンの「ビジネスと人生を逆転させる魔法の名言集」』Al-Biz 出版著
世の中の多くの人は、何かがうまくいかないとすぐに失敗したといって落ち込むものです。
エジソンやイーロン・マスク氏のように革新的な成功を成し遂げる人たちは「うまくいかないこと」を決して失敗とはとらえず、「成功のもと」と考えるのです。
郭 樟吾
脳神経外科東横浜病院 副院長
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