普段から「感情」「論理」を分け、物事を考える習慣を
また、上に立つ人間は自分の感情をしっかりコントロールすることが大事です。
でも、それは単に感情面をないがしろにすればいいということではありません。人間には感情と理性があり、どちらも大事なものですから、どちらかを優先させるということではなく、それぞれの場面やシチュエーションによって使い分ければいいのです。
例えば、人を導くときにはまずエモーショナル(感情的)に働きかけて、最終的にはロジカル(論理的)にまとめると効果的だといわれています。部下に少し難しい仕事を頼むときに、いきなり「この仕事は君にとってプラスになるはずだから、君はこの仕事をすべきだ」などと論理的に迫っても、相手は「やらされ感」や「反感」を抱いてしまいます。
それより、まずは「君のこれまでの頑張りは認めている。だから、ぜひともこの仕事は君にお願いしたいんだ」などと感情に訴えかけたほうが相手の心は動き、扉が開きやすくなります。そして最後に「この仕事をやることによって、君のこうした能力も伸びるはず。だから、君の将来にとってもプラスになるはずだ」と論理的にまとめると、それを実現したあとの展望が予想できて、相手も納得しやすくなるのです。
つまり、最初にロジカルに扉を開けようとすると扉は開きにくくなり、エモーショナルに出ていくと、部屋に残された人は混乱してしまうのです。
また、ずっとロジカルに話すだけでは、まるで偉い人の挨拶のように型どおりで退屈だと思われてしまいます。あるいは、ずっとエモーショナルに働きかけるだけだと、感情的になり過ぎて引かれてしまいます。
僕もわが子を叱るときにはどうしてもエモーショナルに接してしまって扉を閉ざされることが多いので、ここは気をつけたいところです。とにかく普段から感情と論理を分けて物事を考えることが大切です。
それから、一般的にしくじりや失敗をあまり経験していない人は、他人が失敗したときに怒ってしまう傾向があるように思います。自分に失敗の経験が少ないと周囲の人が失敗をしたときも理解することができず、「なぜそんなバカなことをしたんだ?」と怒りを感じてしまうようです。
でも、これまでにたくさん失敗を経験してきた人なら他人の失敗も理解できますし、共感も湧くはずです。そして「分かるよ。だからこそ、こういうことに気をつけなきゃいけないよね。でも次はないぞ」と穏やかに言うことができます。
だからこそ、若い頃にしくじりや小さな失敗を重ねておくことが大事なのです。
僕も若い頃には感情に突っ走ってしまって失敗したことがあります。ある難しい緊急手術の際にピリピリしていたため、対応の遅い看護師に「患者のためにならないんだから、こういうことはやめてくれ」とキツく当たってしまったことがあったのです。あとで上司に呼び出されて注意されましたが、これはまさに怒りの感情に任せて行動しないほうがいいという悪い例です。
その後はたくさんのしくじりや失敗を重ねたおかげで、少しは辛抱強く他人を見守れるようになったのではないかと思っています。
郭 樟吾
脳神経外科東横浜病院 副院長
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