電子レンジで簡単に食べられるポップコーン…商品化の「裏側」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「十勝では農業は成長産業なのです」と関係者は口を揃えます。北海道中小企業家同友会とかち支部農業経営部会は、会を挙げて「6次産業化」に向けて努力を続けています。そうした動きが全国に広がりつつあります。清丸惠三郎氏が著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)でレポートします。

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農業経営者として自立した経営を目指す

■農家も経営を学び、自立する

 

羽田空港から1時間半ほど、初冬の十勝帯広空港に降り立つと冷涼な空気に包まれた、広漠な黒々とした農地の広がりに圧倒される。十勝平野は小麦、ジャガイモ、ビート(甜菜)、豆類、長芋などの日本有数の産地であるだけでなく、隣接する釧路・根室地方と並ぶわが国を代表する牛乳生産地であり、また肉牛飼育でも南九州と並ぶ頭数を誇る。

 

2018年は初夏の天候不順や9月の北海道胆振東部地震によるブラックアウト(大規模停電)の影響もあり、十勝地区24農協の農産物取扱高は17年の3388億円には届かないものの、それでも過去2番から3番目の取扱高だと地元メディア「農業TOKATI2018」(とかち毎日新聞社発行)は予想している。

 

同メディアはまた、十勝地域は21年には17年を上回る3500億円の農業生産額を見込んでいると記している。EUとのEPA締結やアジア太平洋地域11カ国と結んだTPP発効による安価な海外農産物の輸入増というマイナス要因は見込まれるものの、十勝の農業生産者は数字を見る限り極めてアグレッシブに生産拡大に取り組んでいることがよく理解できる。全国的に休耕田畑や耕作放棄地が急速に増えてきているが、十勝では平野部に農地の空きはなく、耕作をやめる農家が出てきても土地は取り合いの状況だと聞く。

 

「十勝では農業は成長産業なのです」と、関係者は口を揃える。当然、農業機械の低廉な自動運転ソフトを開発している農業情報設計社(濱田安之代表取締役CEO)のような農業系ベンチャー企業も集結する。濱田氏は国立研究開発法人農業・食品産業総合研究機構の元研究者で、「20年前からロボットトラクターの開発・研究を続けてきた」という。

 

その研究成果を生かして生み出したのが、GPSを使ってトラクターの位置と方向を把握、直進運転をサポートする「アグリパスナビ」で、いわば農業版のカーナビである。従来型の三分の一の価格で提供できるというので、農機メーカーや農家から大きな注目を集めている。

 

このような十勝の農業の元気を象徴している、あるいは元気を支えている存在が北海道中小企業家同友会とかち支部農業経営部会だ。中小企業家同友会は本来、第二次、あるいは第三次産業に分類される企業経営者中心の会と考えてよい。ところが、とかち支部ではやや趣が異なる。30年ほど前の1989年3月に農業経営部会を発会させて農業者に門戸を開いたのだ。「農業者が中小企業経営者とともに学び合い、〝農業経営者”として自立した経営を行う」ことを目指したのである。

 

当初30人足らずの会員だったが、2010年代には100人の大台に乗り、直近では支部会員880人のうち175人(18年度年初)が農業部会会員という盛況ぶりだ。大規模営農の農家や農業法人が増加し、農家といえどもしっかりと経営を学ぶ必要があると自覚する人たちが増え、その場として3つの目的の一つに「国民や地域とともに歩む中小企業」を掲げる同友会を選ぶようになったことをこの数字は示している。と同時にそのことは、とかち支部の固定観念にとらわれない柔軟で先進的な取り組みと組織の活性化力をも示している。

 

初代部会長は、この地区に産地直送という新しい手法を導入した北海ファーム三和取締役会長の早苗諭氏である。1945年生まれの早苗氏は農業高校を出ると地元へ戻り、畑作中心に切り替え、作物は主として仲卸などを通じて出荷していた。

 

しかしあるとき、4000万円もの不渡りをつかまされることになり、勉強の必要性を感じ同友会に入会する。同時期に紹介する人があり、首都圏のあるスーパーへ直接出荷するようになり、今ではジャガイモ、大根、グリーンアスパラ、ブロッコリーなど多種の野菜が首都圏のスーパーや全国の顧客に送られている。これが十勝近辺の産直のはしりとなった。繁忙期にはスーパーの社員が手伝いに来るようになったともいう。

 

それを見ていた当時の沢本松市支部長が、「全国有数の食糧基地十勝において、時代の変化に対応できる農業経営の勉強をめざそう」と早苗さんに声をかけたのだと、北海道同友会のレポートにはある。

 

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ジャーナリスト
出版・編集プロデューサー

1950年石川県小松市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部卒。人間科学修士(教育学)。

日本短波放送(現・日経ラジオ社)報道部プロデューサー、記者などを経て、ダイヤモンド・タイム社(現・プレジデント社)入社。

「ビッグ・サクセス」「プレジデント」編集長、取締役出版局長などを歴任。

この間、「プレジデント」をビジネス誌NO1に。1997年歴思書院を設立、以降、出版・編集プロデューサーの傍ら、「中央公論」「週刊東洋経済」「夕刊フジ」などを舞台にジャーナリストとして活躍。

主な著書に「出版動乱」「ビア・ウォーズ」(以上東洋経済新報社)、「ブランド力」「数字で楽しむ日本史」(以上PHP研究所)、「北陸資本主義」「地方の未来が見える本」「江戸のベストセラー」(以上洋泉社)などがある。

著者紹介

連載大企業経営者をも魅了!中小企業「経営者団体」の秘密

※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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