地域金融機関は中小企業の強い味方になれるか【中小企業家同友会の試み】 (※写真はイメージです/PIXTA)

全国の中小企業家同友会が地域金融機関と連携を強めています。合同新入社員研修、セミナー開催、さらには提携ローンの開発…、地域金融機関との連携で地域振興につなげることができるのか。清丸惠三郎氏が著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)でレポートします。

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活況の沖縄経済を支える地銀連携

那覇市の中心部にある沖縄海邦銀行本店。役員応接室でインタビューに応じてくれた上地英由頭取はいかにもエネルギッシュな風貌に加え、ざっくばらんな語り口もあって、バンカーというより企業経営者といった印象を与える。ただし経歴は1976年に琉球大学を卒業すると同時に当時の沖縄相互銀行(現・沖縄海邦銀行)に入行。以来、海邦銀行一筋。頭取就任は2012年である。

 

風貌だけでなく、経営の舵取りも相当に挑戦的で、金融庁が志向するリレーションシップ・バンキング(リレバン)に関しては、県内に本拠を置く琉球銀行、沖縄銀行という地銀2行に比較してより積極的だと言われている。ちなみに同行は預金残高6433億円余(18年9月中間期末)で、沖縄県内にある3つの地銀、第二地銀の中では最も規模が小さい。

 

「ここ10年ほど、沖縄経済は活況が続いています。堅調な官公需に加え、観光客増がホテル建設を促し、建設関係は大手、中小問わず好調。起業も活発で、事業所数は増加が続いています。人口も多くの他県と異なり、(首都圏と並んで)今後10年間は増加する見通しですので、他県のように銀行が多すぎるから1県1行に集約しないといけないという状況ではありません。それに沖縄には信用組合はなく、信用金庫も1金庫ですから」(上地氏)

 

その点では地域金融機関の再編を強力に促しているとされる金融行政に必ずしも賛同しない姿勢を明らかにしつつ、上地氏はこう述べる。

 

「森信親・前金融庁長官の時代になると、地域金融機関はそのありようを変えるべきだとの強いメッセージが出された。法人・個人双方に対する顧客本位の密着営業を経営の根幹に据えなさいというのがそれで、私個人はもっともなことだと思っています。われわれは前身が無尽会社であったにもかかわらず、普通銀行に転換する30年以上前から、地銀と同じスタイルで経営を行ってきた。しかし資金が必要な地元の個人、小規模業者を含めた中小企業に融資する第二地銀の本来的な役割を改めて考え直し、信金さんが目を向けている中小・小規模な個人・法人にも目を向けるべきだとの発想で、ここへきて動き出しています。その点で地銀2行さんと若干異なる営業スタイルに変わってきています」

 

こうした海邦銀行と懇談会というレベルを超えて連携を深めつつあるのが、沖縄県中小企業家同友会である。沖縄同友会は女性代表理事、副代表理事が次々と就任する一方、会員数の増強も目覚ましい、先進的で活力ある同友会組織である。

 

すでに触れたように、中小企業家同友会は中小企業にとってのよりよい経営環境づくりを目指して「金融アセスメント法制定運動」を2000年から推進してきた。中心になったのが中村高明・福岡同友会代表理事(現・中小企業家同友会全国協議会副会長)であり、その成果が03年に金融庁から発表された「リレバンの機能強化に関するアクションプログラム」であった。

 

その後、中同協並びに各都道府県の同友会はアクションプログラムに基づき、各金融機関、団体と懇談を重ねてきた。同友会役員向けテキスト『同友会運動の発展のために』では自治体との連携強化を謳うとともに、金融機関との関係についても「地域経済の血液である資金供給をつかさどる金融機関との連携は特に重要です。『地域経済の繁栄』を共通理念に、地域金融機関との懇談を定期化し、中小企業金融政策の充実のために連携していく姿勢を重視しましょう」と強調している。

 

こうしたスタンスの同友会側にとっても、地域金融機関側にとっても画期となったのが当時の森金融庁長官の就任であり、新たな金融行政方針の発表だった。地域金融機関が「利用者に信頼される機関になること、地域に密着したサービスを提供する機関になること」と強く変身を促す森長官の下で15年からスタートした新たな金融行政は、長年、同友会が提唱してきた金融アセスメント法に近づく内容だと理解されていると言っていいだろう。

 

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ジャーナリスト
出版・編集プロデューサー

1950年石川県小松市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部卒。人間科学修士(教育学)。

日本短波放送(現・日経ラジオ社)報道部プロデューサー、記者などを経て、ダイヤモンド・タイム社(現・プレジデント社)入社。

「ビッグ・サクセス」「プレジデント」編集長、取締役出版局長などを歴任。

この間、「プレジデント」をビジネス誌NO1に。1997年歴思書院を設立、以降、出版・編集プロデューサーの傍ら、「中央公論」「週刊東洋経済」「夕刊フジ」などを舞台にジャーナリストとして活躍。

主な著書に「出版動乱」「ビア・ウォーズ」(以上東洋経済新報社)、「ブランド力」「数字で楽しむ日本史」(以上PHP研究所)、「北陸資本主義」「地方の未来が見える本」「江戸のベストセラー」(以上洋泉社)などがある。

著者紹介

連載大企業経営者をも魅了!中小企業「経営者団体」の秘密

※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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