〈米ドル/円〉の為替レート、日本の景気にどこまで影響する? (※写真はイメージです/PIXTA)

通常はドルの値段を意味する「為替レート」。売買される動機が多様なことから、その動きは意外と複雑です。また、売買において「美人投票」的な側面もあり、値動きの予想も困難です。このような為替レートの動きは、日本経済へどれほどの影響を及ぼすのでしょうか。経済規模の拡大や金融テクノロジーの発展により、従来の認識とは大きく違ってきた部分もあります。経済評論家の塚崎公義氏が平易に解説します。

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ドルを売買する人たちの「多様な背景」

「為替レート」というと、通常はドルの値段のことを指します。ドルの値段は需要と供給で決まるわけですが、その動きは意外と複雑です。なぜなら、ドルを売り買いしている人が多様だからです。

 

売り買いしている人①:輸出入をしている人

輸出入をしている人がドルを売り買いするのは当然です。円建の輸出入であっても貿易相手がドルを円に替えたりしているはずですから、結局、貿易収支が輸出入関連のドルの需給を決めているわけです。

 

売り買いしている人②:米国の国債を買っている人

米国の国債を買っている人も、ドルを売り買いしています。日米金利差が拡大すれば、ドルを持つことの為替リスクを覚悟しても米国債を買おうとするのでドルを買いますし、日米金利差が縮小すれば為替リスクを嫌ってドルを売り、日本国債に乗り換えるでしょう。

 

売り買いしている人③:投機家

値動きを複雑にしているのは、投機家です。ドル高を予想すればドルを買い、ドル安を予想すればドルを売る人々ですね。もっとも、ここで投機家と呼んでいるのは、本当のバクチ打ちだけではなく、似たようなことをしている普通の人(下の④)も含めて考えています。

 

売り買いしている人④:来年の旅行に備えている人、等々

来年の海外旅行に持っていくドルを、いまのうちに買っておく人もいるでしょう。輸出企業が持ち帰った売上代金のドルを、すぐに売却するのではなくドル高になるのを待っている、という場合もあるでしょう。そうした取引がすべてドルの需給関係に影響しているわけですね。

 

こうした投機的な売買は、美人投票の世界なので、予想が困難であるのみならず、非常に複雑な動きをするわけですね。

円相場は「米国の景気」で動く!?

輸出入に関しては、米国の景気がよければ日本の輸出が増え、悪ければ日本の輸出が減ります。米国の景気がよければ世界の景気がよくなり、米国以外への輸出も増える、といったこともありそうです。一方で、日本の景気がよければ日本の輸入が増え、悪ければ減るはずなのですが、日本の輸入数量は景気の影響を受けにくいので、米国の景気の方が貿易収支に影響しているようです。

 

日米金利差についても、米国の景気が重要です。日本の金利はどうせゼロですから(笑)。まあ、最近の日本はゼロ金利ですが、そうでなくとも日本のほうが米国よりインフレ率が低い傾向にあるので、金利変動が小さいことは確かなようです。

 

そして問題は、美人投票です。人々がなにに注目するのかによって結果が大きく異なりますから、大きな波乱要因となりかねないわけですが、投機家たちは、米国の事情を日本の事情よりも重視する傾向にあるので、米国の事情で為替レートが動くことが多いのです。

 

それはなぜかと問われても「ほかの投機家等が日本の事情より米国の事情を重視しているので、自分もそうしないと儲けられない」と投機家たちが考えているから…としか言いようがありませんね(笑)。

かつて、米国の景気拡大は「円高要因」だったが…

かつて、投機家たちは米国の貿易収支に注目していました。その頃は、米国の景気が拡大すると米国の輸入が増えて貿易収支の赤字が膨らむので、米国の景気拡大はドル安円高の要因だと考えられていたわけです。

 

米国の貿易赤字が大きいことがプラザ合意の原因だとすれば、米国の貿易赤字の拡大は再度のプラザ合意を誘発しかねない、といった発想が根底にあったのだろうと思われますが、真相は美人投票ですから不明です(笑)。

 

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経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。2022年4月に定年退職し、現在は経済評論家。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

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