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毎月の給料、「タンス預金」にするしか…
銀行はどのようにして世の中の役に立っているのでしょうか? それを知るために「銀行がなかったらなにが困るか」を考えてみましょう。
銀行預金という制度がなかったら、サラリーマン(サラリーウーマンや公務員等を含む、以下同様)は給料日に札束で給料を受け取り、それを「タンス預金」しておくことになります。強盗が暗躍する世の中になりそうです。預金を預かって安全に保管してくれて、しかも利子まで払ってくれるのはありがたいですね。
送金も便利ですね。いちいち現金書留で送るのは面倒ですから。とくに、海外に現金書留を送るのは費用も手間もかかるうえに、途中で紛失されてしまうリスクもあるでしょう。
余談ですが、われわれがATMで気軽に行っている送金は、じつは銀行相互で結構複雑な取引がされているのです。送金者と受取人の取引銀行が違ったら、銀行同士での資金決済を日銀に依頼する必要があるからです。
「この人、返済してくれるかしら?」お金の貸し借りに大きな不安
銀行がなければ、金を借りたい人はだれから借りたらいいのか探すのが大変ですし、貸したい人も、だれに貸したらいいか探すのが大変です。銀行があれば、とりあえず余った金は銀行に預けておけばよいし、借りたければ銀行に借りに行けばいいのです。
最近はマッチングアプリのようなものがあるので、資金貸借取引にもそれが応用できるのかもしれませんが、それでも課題は残ります。貸し借りの契約書を作るのに慣れていない人が多い、ということもありますが、なにより問題なのは「この借り手は、ちゃんと金を返すだろうか(返す意志と能力があるだろうか)」ということがわかりにくいことです。銀行は、借り手の返済能力を判断するプロなので、貸倒れを最小限度に抑えることができるのです。
企業の巨額の資金調達、事務手続きを考えるだけで「絶望」
巨大企業が100億円借りたいという場合、100億円持っている人はいないでしょうから、100万人のサラリーマンから1万円ずつ借りる必要がありますが、それは大変です。契約書を作るだけでも大変な手間ですし、個々のサラリーマンが借り手の返済能力を調べるのも大変です。
銀行があれば、100万人のサラリーマンが銀行に預金し、大企業が銀行から借りるので、シンプルです。
えっ、「お金は10年後に返す」なんて言われても…
サラリーマンは、給料日に金がありますが、次の給料日前日にはあまり金がないのが普通でしょう。すると、「10年後に返すから工場建設資金を貸してくれ」と言われても、100万人のサラリーマンが集まっても貸せないでしょう。しかし、給料日前には企業が金を持っていて、それを銀行に預金しています。
そこで、両者の預金を合計すると銀行には常に金があるのです。「金は天下の回りもので、誰かに金がある時は誰かに金がないが、銀行には常に金がある」ので、「10年経ったら返してね」と言って貸し出すことができるのです。
銀行のビジネスに重要な「大数の法則」
銀行のビジネスで重要なのは「大数の法則」です。統計学の難しい話は省略するとして、ごく簡単に説明すると「コインを2万回投げると、大体1万回表が出る」ということです。
過去の統計から預金者が預金を引き出す確率が1%だとすれば、100万人の預金者のうち1万人程度が預金を引き出す、ということなので、銀行は99万人分の預金を貸し出しに使うことができるのです。「預金者が引き出しに来るといけないから、預かった金は金庫に入れておこう」などと考えていたら、銀行は貸し出しを行うことができませんから、大数の法則は銀行にとって大変ありがたいのです。
貸し出しの面でも大数の法則は大変役に立ちます。過去の統計から貸出先の倒産確率が1%であるならば、貸出金利を1%高く設定しておくことで、100社に1社の貸倒損失が回収できることになります。
もっとも、どちらにも例外はあります。預金に関しては、「取り付け騒ぎ」です。「あの銀行は危ない」という噂が流れると、預金者が一斉に預金を引き出すことがあるのです。もっとも、銀行がそれに備えて預金を全部金庫に入れておいたのでは商売になりませんから、「取り付け騒ぎが起きたら日銀の現金輸送車が札束を届けるから、安心して貸し出ししていい」ということになっているわけですね。
貸し出しに関しても、バブル期の不動産融資には大数の法則が働きませんでした。ひとつは不動産貸し出しに集中しすぎたこと、もうひとつは不動産価格が高騰したあとに暴落するところまでは大数の法則に織り込まれていなかったこと、などが原因だったわけです。
金融は経済の血液、銀行は経済の心臓
金融は経済の血液、銀行は経済の心臓、と言われることがあります。普段はありがたみを感じないけれども、機能が停止するとありがたみを痛感する…ということでしょう。バブル崩壊後の金融危機で日本経済が甚大な打撃を被ったことを覚えている人には、納得でしょう。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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