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経済には「温かい心」と「冷たい頭脳」が必要
「弱者保護は弱者を苦しめる」などと書くと、筆者は冷たい人間だと思われるかもしれません。しかし、筆者は被災地への寄付などもしていますし、自分では温かい心を持っていると自負しています。
重要なのは「温かい心と同時に、冷たい頭脳も必要だ」ということです。たとえば、温かい心だけで子育てをすれば、子どもの要求をなんでも受け入れてしまうかもしれませんが、ときとして冷たい頭脳で「ダメ」ということも必要なのです。経済についても同様です。そこで本稿では、筆者は敢えて温かい心を脇に置き、「冷たい頭脳」で論じることにしました。ご理解いただければ幸いです。
新NY市長「最低賃金の大幅引き上げ」をするらしいが、心配…
最低賃金を引き上げよう、というのは温かい心から出てくる政策でしょう。しかし、その結果として多くの企業が「それなら雇わない」と考え、失業者が増えてしまうかもしれません。そうなれば、労働者が苦しむことになります。新ニューヨーク市長が最低賃金の大幅引き上げをするそうですが、心配です。
心の優しい王様が「イモの値段を下げろ」と命令すると、「それなら市場まで売りに行くのが面倒なので、豚の餌にしよう」と考える農家が出てくるでしょう。その結果、人間が食べられるイモの量が減ってしまいます。それだけではありません。「すごく空腹だから、高くても買いたい」という人がイモを買えるとは限らなくなります。運のいい人がイモを手にするようになるからです。それではすごく空腹の人が苦しみます。
貧しい人のために「狭い家の家賃は安くしろ」という法律を作ったとします。大家たちは金持ち向けの広い家ばかり建てるようになり、貧しい人の住む家が足りなくなってしまうかもしれません。
「女性に重労働をさせるな」という法律ができると、「それなら男性を雇う」という会社が出てきて、女性の失業者が増えてしまうかもしれません。あるいは「男性以上に働いて、男性の同僚より偉くなりたい」と考えている女性が苦しむことになるかもしれません。
インフレで困っている人のために減税しよう、という政策も、インフレを加速して困っている人をさらに困らせるかもしれません。そのあたりは拙稿『高市内閣「経済政策」への懸念点…インフレ加速が起こりかねない理由【経済評論家が解説】』併せてご参照いただければ幸いです。
弱者保護、弱者全体の利益になるか否かは「状況による」
筆者は、弱者保護を一律に否定するものではありません。弱者保護が弱者全体としてメリットになる場合も多いからです。
最低賃金を1%上げたら失業率が10%上がるのだとすれば、最低賃金を上げるべきではありません。しかし、最低賃金を10%上げても失業率が1%しか上がらないなら、最低賃金を上げたうえで失業者に失業手当を支払ってあげればよいのです。そのあたりは、最低賃金が上がったら雇うのをやめるという会社がどれくらい多いのか、見極めてから判断すべきでしょう。
狭い家の家賃を安くしろ、という法律ができても、今ある狭い家が古くなって取り壊されるまでは貧しい人も困りません。そこで、それまでの間に経済を発展させて貧しい人の給料を引き上げ、法律を廃止することができれば、大家たちはふたたび狭い家を建てるようになるでしょうから、貧しい人も困りません。あとは、貧しい人の給料が上がるような経済発展が可能か否かの見極めでしょう。
女性に重労働をさせるな、という法律ができたとして、会社は「重労働は男性に、軽労働は女性に頼もう」と考えるかもしれません。それなら女性の失業率は上がらないでしょうし、出世したい女性は軽労働に長時間勤しめばよいので、問題は起きないでしょう。
「行き過ぎた弱者保護」は、皆を不幸にするかも…
最低賃金を極端に引き上げると、賃金が払えずに倒産する企業が増えて失業率が上がってしまうかもしれません。そうなれば不況になって経済全体が困ることになります。あるいは企業が賃金上昇を価格に転嫁することにより、インフレになって多くの消費者が困るかもしれません。
失業手当を多額に払いすぎるのも問題です。仕事があるのに「失業手当をもらって寝ながら暮らそう」という人が増えてしまうと、労働力不足で経済が回らなくなってしまうかもしれません。それだけではありません。そうなれば政府は失業手当を減らすことになるでしょう。寝て暮らしている間に元労働者が怠惰な暮らしに慣れてしまったり、昔のスキルが失われてしまったりして、仕事に戻ることができないかもしれない、という問題も起こり得るわけです。
重い病の患者を1日延命する画期的な薬が開発されたとして、それが1回の治療につき1億円かかるとします。しかし「患者が可哀想だから健康保険で払ってあげよう」などと考えるべきではありません。1万人の患者を100日延命させるために、日本人の大人が1人あたり100万円を払う必要が出てきます。そうなれば日本経済全体が破綻してしまうでしょう。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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