新築ばかりを進める日本は、時代の流れに逆らっている
古い建物が解体される理由はこのようにさまざまですが、一方で「それのどこがいけないのか?」という声もあります。たくさんの人たちの交流の拠点となり、雇用を生み出し、経済効果ももたらす。素晴らしいことではないか、というわけです。
その点においては私も否定しません。それは建築物がもつ「力」の一つだといえます。
ただ、そうしたメリットをもたらすことができるのは、なにも新しい建築物に限るわけではないということもまた強調しておきたいポイントです。古い建築物であっても、その本質的価値を活かすことで地域の交流の拠点となり、雇用促進につながり、経済的な効果を地域にもたらすことは十分に可能なのです。
それは実際に、古い建築物の再生・活用をこれまでにいくつも手がけてきた私自身の経験からいえることです。
そもそも、古いものを捨て去り、新しいものを追い求め続けるというスタイルは今の時代にはそぐわないやり方です。かつての日本は大量生産・大量消費・大量廃棄という社会システムのなかで経済成長を遂げてきましたが、現在では地球環境への配慮もあって、そうした考え方が通用しなくなっています。
大量消費型の社会に取って代わるかたちで現れた社会のあり方が「循環型社会」です。
循環型社会とは大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会に代わるものとして提示された考え方で、製品が廃棄物になることを抑制し、廃棄物になったとしても可能な限り資源として再利用し、どうしても使えないものは適正に処分するという社会のあり方を示しています。
「天然資源の消費を抑え、できる限り環境への負荷を少なくする社会」といえます。そうした社会の形成を推進するための法律「循環型社会形成推進基本法」も平成13(2001)年に施行されています。
古い建物をどんどん壊し、新しい建物を次々に建てていくという日本のやり方は時代の流れに逆らうものといっていいほどなのです。
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