「国内旅行になら行きたい」回答多数…コロナ禍における「日本人の旅行観」の現状

コロナ禍で、国内旅行への注目度が高まっています。旅行の目的には「歴史・文化観光」を挙げる人も多く、地域の古い建物を活用することで、観光客の集客、ひいては地方創生もつながる可能性があります。歴史的建築物の再生・活用を中心に活躍する一級建築士の鈴木勇人氏が解説します。

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コロナ禍「旅行をするなら国内」と考える人が急増!

日本交通公社が毎年行っている調査に「JTBF旅行者調査」があります。令和2 (2020)年に行われた調査を見ると、興味深い結果が出ていました。

 

調査にあたって「新型コロナウイルスの流行が収束したあと、国内/国外の観光レクリエーション旅行へ行きたいと思いますか」という設問があるのですが、海外旅行に関しては「当面は行きたくない」と答えた人が41.6%にものぼったのです。「収束しても、もう行きたくない」「新型コロナウイルスの流行に関係なく、旅行には行きたくない」という回答を合わせると71.7%を占めます。

 

じつに7割以上の人が海外旅行を敬遠しているというのは、ある意味衝撃的なことです。海外諸国は日本に比べると多数の感染者・死者を出していますが、旅行の意欲への影響は決して小さくはありません。

 

一方、国内旅行に関しては「行きたい」と答えた人は69.8%にのぼります。「当面は行きたくない」「収束しても、もう行きたくない」「新型コロナウイルスの流行に関係なく、旅行には行きたくない」と答えた人は合わせて30.0%。海外旅行とは大変対照的な結果となりました。「今後、旅行をするならしばらくは国内」という潮流が生まれているのです。

 

新型コロナウイルスの影響で旅行業界は大変なダメージを受けていますが、その収束後の反動の大きさに期待が集まっています。

 

実際に日本交通公社による「JTBF旅行者調査(2020年)」でも、新型コロナウイルスの影響があった観光地に対しては62.2%の人が「なんらかの支援をしたい」と考えているという結果が出ています。観光地への支援とは、その地へ行き、消費をすることにほかなりません。今後、国内の旅行産業は活気を取り戻すと考えられます。

 

先の調査で「今後1~2年の間にあなたが行ってみたいと思うのは、どのようなタイプの旅行ですか」という設問もあり、38の選択肢が用意されています。そのうち上位10位を占めるのが「自然観光」「温泉旅行」「グルメ」「歴史・文化観光」「海浜リゾート」「テーマパーク」「都市観光」「町並み探索」「ロングステイ」「ショッピング」でした。

 

ここで注目してほしいのが「歴史・文化観光」「町並み探索」です。

 

「歴史・文化観光」は「歴史や文化的な名所を見てまわる観光旅行」のことを指し、「町並み探索」は「美しい町並みを楽しむ旅行」を指します。いずれも歴史的価値のある古い建築物が関わっているといえます。

 

「歴史・文化観光」「町並み探索」のどちらにおいても、その目的を満たす旅行先として「京都府」がトップになっているのですが、そのことからも歴史的な建築物が重要な役割を果たしていることがうかがえます。なお、惜しくもトップテンからは外れましたが、11位には「世界遺産巡り」が入っていました。

 

これから息を吹き返す国内旅行において、古い建築物がその存在感を増していく可能性はますます大きくなると私は考えています。

 

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    ボーダレス総合計画事務所 代表取締役

    千葉工業大学工学部建築学科を卒業。1998年1級建築士取得。有限会社鈴木設計に入社し、2001年に同社の専務取締役に就任したのち、2004年に代表取締役に就任する。建築物が社会に与える影響を重視し、「対話を重ねた建築」を指標に掲げ、歴史的建築物の再生・活用を中心とした建築設計に従事。2016年に福島県建築文化賞「復興賞」、2012年に日本建築士会連合会賞「優秀賞」など、多数の受賞歴を持ち、福島県を中心に再生建築の重要性を説く講演活動も行う。2022年2月には京都工芸繊維大学ヘリテージ・アーキテクト養成講座を修了するなど、新たな職能から「まちづくり」に挑戦している。

    著者紹介

    連載連載>地方創生は古い建築物を見直せ

    地方創生は古い建築物を見直せ

    地方創生は古い建築物を見直せ

    鈴木 勇人

    幻冬舎メディアコンサルティング

    真の地方創生とは―― 福島県の復興を担ってきた建築家が示す、 伝統ある建築物の可能性とその活用法 日本の古い建築物が次々と取り壊されています。 経済効果を生まないという極めて短絡的なもので、スクラップ&ビルド…

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