中小企業のなかには、数少ない主力商品に依存し、長年同様のビジネスを繰り返しているところもあります。しかし、ビジネスを取り巻く状況の変化や、新しいテクノロジーの開発・普及がおこれば、あっという間にビジネスは行き詰ってしまいます。北海道で豆菓子の製造販売を展開するある企業の実例から、中小企業でしばしば起こる経営上のピンチについて解説していきます。

下がり続ける売り上げ…複合的な要因が作用

大学卒業後、東京で就職して4年ほど勤務していた筆者は、父の病気をきっかけに会社の跡継ぎとなる準備をすることになりました。

 

大阪での1年半の修業で豆菓子作りの基礎を学び、1977年、28歳の時に家業に戻りました。そこでまず感じたのは「大阪の修業時代に比べ、工場はまるで眠っているように静かだ」ということでした。かつては従業員が忙しそうに動き回り、機械があちこちで稼働していましたが、活気が感じられなくなっていたのです。

 

この時も、主力商品のバターピーナッツは売れていましたが、徐々に売れ行きが悪化していました。注文数も注文量も減りましたが、かといってすぐに会社が倒産するほどではなく、まるで病気が父の体を蝕んでいくように、バターピーナッツの売り上げは着実に減っていきました。

 

売り上げが減っている原因は、外国製品が市場に参入してきたことによる構造不況でした。このころの私たちの会社は、ピーナッツ問屋から千葉県や茨城県産のピーナッツを買い、バターピーナッツに加工していました。その後、安価な中国産原材料が輸入されるようになったため、原材料を国産から輸入品に変えて価格競争力をつけようと考えました。ただ、同じように国産よりも安い中国産の原材料を使う業者は多く、価格競争が激しくなっていきました。

 

しかし、構造不況の原因はそれだけではありません。脱酸素剤が開発され、鮮度と美味しさを落とさずに輸入できる技術が広まっていくことで、中国からは原材料のピーナッツではなく、現地で作ったバターピーナッツの製品自体が輸入されるようになっていきました。

 

この変化に、すぐに対応したのがバターピーナッツの生産設備を作っている日本の機械メーカーです。そもそもピーナッツは南京豆とも呼ばれ、中国が世界的な生産地です。加工に関しても、中国は人口が多く労働力が豊富ですし人件費が安いという強みがあります。

 

そこで機械メーカーは国内で加工する事業モデルに加えて、中国に機械を持ち込み、現地で生産して日本に出荷する事業モデルに変えていきました。結果、価格競争が激化し、生産量や出荷量が同じでも売り上げが減る状態に入っていったのです。

 

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小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

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池田 光司

詩想社

価格競争や人材不足、災害やコロナ禍のような外部環境の変化によって多くの中小企業が苦境に立たされています。 創業74年を迎える老舗豆菓子メーカーの池田食品も例外ではなく、何度も経営の危機に直面しました。中国からの…

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