在宅医療患者1000人超、訪問件数1万5000件…求められる在宅診療とは

一次医療圏で在宅診療に専門特化した診療所の事例から【前編】

在宅医療患者1000人超、訪問件数1万5000件…求められる在宅診療とは
(※画像はイメージです/PIXTA)

在宅医療は24時間体制、外来診療は365日診療を行い、在宅医療、外来診療と地域貢献・地域連携の3本柱で患者を支える。住み慣れたまちで高齢者が孤立しないように取り組む在宅医療に特化したわかさクリニックを紹介します。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

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      外来診療、在宅診療、地域貢献・地域連携を融合

      在宅医療は、24時間体制で夜間・休日や緊急時にも迅速に対応する。また、外来診療は、平日昼休みをなくして365日診療を行っている。外来診療、在宅医療と地域貢献・地域連携活動を融合させ、地域の患者を見守りながら医療と介護のサービスを提供し、患者の利便性を高める。目指すものは、地域とともにまちをつくること。超高齢化社会において、住み慣れたまちで高齢者が孤立しないように取り組む。その姿勢は、休まず止まらない。

       

      ■はじめに

       

      吹き抜けのある幅の広い明るく開放的な階段を上がり、ドアを開けると、目の前のオペレーションルームの大きさに驚く。毎朝、スタッフがデスクに着き、全員が正面を向くと、目の前には巨大なスクリーンがゆっくりと下りてくる。同時にスクリーンの両側にある大型モニターには、データが映し出される。

       

      わかさクリニックの1日は、朝のカンファレンスから始まる。在宅医療支援の指令室である在宅医療課は、企業のオペレーションルームと見間違えるほどの大規模な設備が整っている。スクリーンには、患者の情報が投影され、全員で患者へのケアについて話し合いが行われる。

       

      わかさクリニックは、大規模在宅医療部門を抱えた診療所であり、在宅医療を提供している患者は桁違いの1,000人、訪問件数は年間1.5万件を超えている。常により良い医療を追求し、医療と介護の一体化を目指す。患者に寄り添うあたたかい心を持ち、お互いに支えあって生きてゆく『まち』を実現させる理念を掲げ、地域医療に取組んでいる。

       

      間嶋崇院長は、笑顔の中にもパワフルなエネルギーが満ち溢れている。穏やかな表情に反して発想はアグレッシブで、患者のためにやりたいことが次々と湧いて出てくる。以前は、外来診療に来られなくなった患者を訪問し診察していた。しかし、これでは患者をカバーしきれないと思い、間嶋院長は在宅の仕組みを1 年半かけて学んだ。

       

      「当初は、2,000人の在宅をみられるようなシステムを組みたいと考え、勉強を始めた。しかし、現段階のシステムでは1,000人が限界だ。」と言う、その発想と規模は大きい。間嶋院長のアイディアとそれを実現するための運営、スタッフのモチベーションはどのように保たれているのだろうか。

       

      本稿の事例では、大規模に在宅医療を運営する診療所の経営戦略と地域を巻き込み患者とかかわりを持つ取り組みについて探る。

       

      ■わかさクリニックの概要

       

      2000年1月に創立されたわかさクリニックは、2011年11月に間嶋氏が院長を引き継ぎ、新たなスタートを切った。所沢の地域医療に全力を尽くす志を受け継いだ間嶋院長は、その後、患者の声に耳を傾け、総合診療科、外科、泌尿器科、美容皮膚科など数多くの診療科を増設し、機能強化型在宅支援診療所として在宅患者に十分な医療を提供し、患者の最期を見守っている。

       

      わかさクリニックは外来診療と在宅医療を行い、地域の「かかりつけ医」として、高齢化社会に適応する医療を提供している。その在宅医療は一般的なイメージとは異なり、大規模かつシステマチックに運営されている。

       

      間嶋院長は、以前、大学病院に外科医として勤務しており、当時は手術を手掛ける日々を送っていた。大学病院の患者在院日数は短く、患者はある段階で他病院に転院しなければならない。間嶋院長は、手術後の患者を最後まで責任をもって診るためにかかりつけ医に取り組みたいと考え、わかさクリニックを受け継ぐことを決意した。

       

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