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患者の病気が治る病院でないと生き残れない
■断らない医療・患者主体の医療を実現するための仕組みと、患者へのフォロー
断らない医療の実現のため、救急医療体制が整備されており、経過観察ベッドは25床が確保されている。特徴的な点は、EMT(Emergency MedicalTechnician:救急救命士)課と、CE(Clinical Engineer:臨床工学士)部(診療支援課・医療技術課)が設置されている点である。大学病院以外でこれらが設置されることは非常に珍しい。
第1に、EMT課では18人の救急救命士が在籍しており、ER総合診療センター(救急外来)内で日々活動をしている。ここでは院内急変時の対応、満床時の転院患者マネジメント、夜勤隊ではホットラインの対応、ヘリコプター搬送の院内連携を担うなど、救急診療の円滑化を図る大きな役割を担っている。
具体的には、救急隊からの様々な情報を聴取整理し、救急担当医師へ受け入れを依頼する。また、救急患者が搬送されてきた際には、患者の容態をいち早く把握し、治療へとつないでいる。ドクターヘリ、消防防災ヘリ、ドクターカーによる転院患者の搬送もEMT 課が中心となり活動している。
もともと救急救命士は、消防行政における救急活動を行う国家資格である。一般的には救急車等に乗車し、傷病者の観察・処置を行い、医療機関まで搬送する役割を担っている。救急救命士の多くは消防機関に勤務し、病院に勤務する人は、全国で13%と極わずかである。埼玉石心会病院では、EMT課の存在により、医師や看護師は診療に集中して治療や検査、処置、看護に注力できる。
第2に、CE部は、医療機器のスペシャリストとして専門性を高め、安心で安全な医療を提供するために、日々業務にあたっている。CE 部もEMT課同様に、大学病院以外で単独設置されていることは全国的にも珍しい。埼玉石心会病院は、最先端の医療機器が多数あり、この部門の設置は安定した業務の遂行に欠かせない。
CE部には診療支援課と医療技術課の2課が設置されている。診療支援課は、手術センターやカテーテルセンターで医師のサポートを行っており、カテーテルセンター部門、不整脈関連部門、体外循環部門、低侵襲脳神経センター部門の4つの専門領域に分かれている。
ここでは、心臓、脳カテーテル業務、心臓手術業務、急性血液浄化業務、救急治療業務に積極的に取り組んでいる。医療技術課では、院内に医療機器が安全に稼働できるよう、技術提供を行っており、血液浄化部門、集中治療部門、機器管理部門、高気圧酸素部門の4つの専門領域に分かれている。
そして、日々安全な治療が提供できるよう、人工呼吸器・人工透析装置・人工心肺装置等医療機器の保守管理を行っている。CE部は、当直、オンコール体制をとり、24時間365日、救急治療に対応する部署として活躍している。
EMT課、CE部(診療支援課・医療技術課)の専門部隊が大学病院並みに機能し、高い技術を支えることで、断らない医療の実現に大きく寄与している。
石原病院長(当時)は、「病院は本来、病気が治るところだということが、そもそも論である。治すためにメディカルメンバーが頑張らなければいけない。病院経営は、患者の病気が治る病院じゃないと生き残れない。いかに相手の要望に合わせるのかが医療サービスの大前提であり、こちらのレールではなく、患者さんのレールで満足、納得してもらうことが重要である。」と、患者主体の医療の実現について話す。
患者主体の医療において、石原病院長(当時)が徹底していることは、インフォームドコンセントである。石原病院長(当時)は、「患者に対して、自分の体に何が起きていて、どのようなリスクがあり、どのような治療の選択肢があるのか、病気や治療の特徴について時間をかけて徹底的に説明し、今後の治療法を患者自身に良く考え選択してもらっている。
例えば、脳血管治療において、不幸にもクモ膜下出血が起こった場合、どうにか命を取り止めても後遺症が残る場合もあり、患者本人だけではなく家族の生活まで一変することがある。
そのため、病気の怖さや破裂を予防する方法があることを理解してもらう必要がある。これは、どんなに手間がかかっても、患者が理解してくれるまで説明する過程を端折るわけにはいかない。」と、患者への粘り強いインフォームドコンセントの重要性を語っている。