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名刺には病院の連絡先自分の携帯番号
■患者を治すためのチーム医療の実践
これだけ多くの救急患者が毎日来院するなか、患者の病気を治すことに徹底し、柔軟なチームを形成することは、何よりも病院の強みと言える。この、ハードな救急医療の効果的な運営は、内科医・外科医を融合した垣根を超えた医療チームによる治療が挙げられる。
さらに、医師や看護師が治療や検査、処置、看護などの業務に集中するため、それらをサポートする専門チームの存在により効果を上げている。EMT課の救急救命士による救急業務に関わるすべてのサポートと、CE 部の医療支援課と医療技術課による、治療に対するサポートと医療機器の技術的サポート、さらには、患者および家族に寄り添うソーシャルワーカーとナースチーム等のすべてが噛み合い、駆動している。結果として、チーム医療の実践が、埼玉石心会病院が患者からの信頼を獲得する根源となっている。
(3)まとめ
理念である患者主体の医療を実現するために、石原病院長(当時)は退院する患者と可能な限り面談をし、患者に連絡先を渡している。
「名刺には、病院の連絡先や自分の携帯の電話番号も書いてある。いつ何があっても、旅行先からでも、ケガをしたり、原因がわからないけれど具合が悪かったりした時など、困った時は電話していいと患者に伝えている。命に係わる病気で、僕は休みだから今日は診られないとは言えない。そんな期間限定みたいなサービスはおかしい。患者の病気を心配するのは僕らの責任の範囲である。」石原病院長(当時)は、情熱的に、でも穏やかな顔で話していた。
理念の実現は、石原病院長(当時)を先頭に、職員一人ひとりによる患者への熱い思いにより、着実に築き上げられている。
埼玉石心会病院の正面玄関前には、スペインから取り寄せた樹齢300年のオリーブの樹がそびえ立つ。このオリーブは、300年の時を経て地面に根を張り長生きしており、生命のエネルギーを表すシンボルとして、思いを込めて植えられている。
そして、そのまわりに置かれている石碑には、埼玉石心会病院がモットーとするトルストイが残した名言、「The sole meaning of life is to serve humanity. 人生における唯一の意義は、人のために生きること。」が刻まれている。この思いはオリーブの樹とともに、この先ずっとこの病院に根付いていく。
杉本ゆかり
跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長