(※写真はイメージです/PIXTA)

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当時と今を重ねてみると・・・

米国成長株式について、1998年のLTCM危機当時の安値と、2020年のパンデミック当時の安値を100として重ねると、[図表6]となります。

 

2000年当時と今回の米国成長株式:「始まり」があれば「終わり」もある。
[図表6]2000年当時と今回の米国成長株式:「始まり」があれば「終わり」もある。

 

インフレは[図表7]のとおりです。

 

2000年当時と今回のインフレ率:インフレ率は今回のほうが高い。
[図表7]2000年当時と今回のインフレ率:インフレ率は今回のほうが高い。

 

政策金利は[図表8]のとおりです。

 

 2000年当時と今回の政策金利:政策金利は今回のほうが低い。

[図表8]2000年当時と今回の政策金利:政策金利は今回のほうが低い。

 

やはり、利上げは遅く、インフレが高い、流動性も供給している。その分、金融緩和の度合いが強まっていて、それが株式市場の評価・バリュエーションに大きな影響を与えていると想像できます。

問題は、インフレの鈍化前の「急速な引き締め」

もちろん、[図表9]に示すとおり、過去の経験則に従えば、利上げが進む間は株価上昇が続いており、問題はないかもしれません。

 

過去は、利上げが続く限り、株価は上昇。利上げはまだ始まってもいない。
[図表9]過去は、利上げが続く限り、株価は上昇。利上げはまだ始まってもいない。

 

来年には、利上げのペースもスローダウンし、利上げ終了までにまだ2年くらいかかる可能性もあります。なぜなら、[図表10]に示すとおり、インフレはやがて鈍化していくと見られるためです。

 

インフレ率は、2023年でも2%を超えたままだが、それでも鈍化していく見通し。
[図表10]インフレ率は、2023年でも2%を超えたままだが、それでも鈍化していく見通し。

 

ただし、FRBとしては、①インフレが落ち着いてくるのを皆が見て納得するまでは、インフレと戦う姿勢を示す必要があるでしょう。また、②巨大なバランスシートが抱える金利リスクに焦点が当たる前に、バランスシート縮小に着手する必要があるでしょう。

 

問題は、(インフレ率の鈍化を待つ前に実施される)今年の急速な引き締めに、米国成長株式優位の相場が耐えられるかどうかがわからない、ということです。筆者自身は、相場転換の「可能性」に備え、ポートフォリオの分散を進めています。

欲をかくことなく、分散を進め、長期で取りに行く

「今回は2000年のようなバブルではない」。たしかにそうかもしれませんが、毎回の景気拡大を終わらせるのは引き締めです。そして、景気後退が来るたび、グロース、バリュー、グロースと、相場は転換しています。

 

1998年夏のLTCM危機で「質への逃避」が起き、FRBは秋に金融利上げと流動性供給を行う。
[図表11]1998年夏のLTCM危機で「質への逃避」が起き、FRBは秋に金融利上げと流動性供給を行う。

 

引き締めを目前にした現在、ポートフォリオを管理する上で重要なのは、「次の景気拡大でゲームをいかに優位に進めるか」まで考えておくことです。

 

そのためには、現時点において「欲をかく」ことなく、引き締めの後に来る弱気相場や景気後退で損失を少なくすることが肝心です。次の景気拡大で資産をさらに大きく増やすことを考えましょう。

 

米国成長株式優位の相場が続くかどうかの「見極め」の期間に求められているのは、売りではなく、分散投資です。したがって、成長株式がこのまま走った場合の機会損失も大きなものにはならないはずです。インフレが鈍ったときに、再考することもできます。

 

 

重見 吉徳

フィデリティ投信株式会社

マクロストラテジスト

 

 

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