「原状回復必須」だったが…契約違反に怒る家主の主張【弁護士が事例解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

原状回復が必須となっていたアパートにおいて、退去から1年以上も原状回復費の支払いを拒否した元借主……貸主は契約違反だとして、原状回復工事完了までの期間の家賃を元借主に請求するため、裁判を起こしました。この貸主の訴えに対し、裁判官はどのような判決を下したのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

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原状回復工事が延期…原因の住人に賃料請求は可能?

【アパートオーナーからの質問】

私の所有するアパートの一室を貸していたのですが、この度賃借人から解約の申し出があり、鍵の返還を受けました。

 

しかし、鍵の返還を受けた時点では原状回復はなされておらず、什器やエアコン等の備品が付いたままであり、その後、賃借人はあれこれ理由をつけて原状回復工事の費用の支払いを拒否し続けました。

 

結局、賃借人から原状回復工事の費用の支払いを受けられて工事ができたのは、鍵の返還を受けてから1年以上経った後でした。こちらとしては、原状回復工事が完了するまでは、貸室の明渡しも完了していないものとして、賃料を請求したいのですが、可能でしょうか。

 

なお、賃貸借契約書には、明渡しと原状回復については以下のように規定されています。

 

15条1項 賃借人は、本件賃貸借契約が終了したとき、本件居室を遅滞なく賃借人の負担で、自然損耗と認めがたい破損・汚損箇所を修繕する等、原状に復して賃貸人に返還する。

 

2項 賃借人は、前項の原状に復するための工事を、賃貸人又は賃貸人が指定した業者に委託することを予め承諾する。

 

3項 賃借人が本件居室を返還した後、本件居室に残置物等が存する場合、賃借人はその所有権を放棄し、賃貸人は、賃借人の費用負担でその撤去、任意処分、その他必要な措置をとることができる。賃借人は、これに対して異議を述べない。


【説明】

賃貸借契約終了時における賃借人の原状回復義務については、改正民法621条により以下の通り明確に規定されました。

 

民法621条

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。 以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。

 

もっとも、この規定では「賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。

 

とされているだけであり、

 

賃借人が原状回復義務を履行するまでは、明渡し(契約の終了)は認められず、賃料支払義務を負うのか

 

という点については明らかではありません。

 

この問題が争われたのが、東京地方裁判所平成28年2月19日判決であり、本件の事例は、この裁判例をモチーフにしたものです。

 

この問題について、裁判所は、契約書において、原状回復をした後に退去すべき、と合意されていると解釈されるかどうかによって判断しています。

 

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こすぎ法律事務所 弁護士

慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。神奈川県弁護士会に弁護士登録後、主に不動産・建築業の顧問業務を中心とする弁護士法人に所属し、2010年4月1日、川崎市武蔵小杉駅にこすぎ法律事務所を開設。

現在は、不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理等に注力している。

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著者紹介

連載現役弁護士による「賃貸・不動産法律問題」サポート相談室

※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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