裁判所は「合意の証拠はない」として賃料請求を認めず
そして、裁判所は、本件については
「本件賃貸借契約及び本件更新契約において、本件居室の明渡しにつき「原状回復をした上で明け渡すこと」を指す旨合意したことを認めるに足りる証拠はない。」
「かえって、本件更新契約15条1項は、原状回復と返還(明渡し)とが別の行為であることを前提とし、明渡しに先立って原状回復が行われなければならない旨を定めているものと解される」
と述べて、原状回復工事完了までの賃料の請求は認めませんでした。
また、賃借人がエアコンの撤去などせずに明渡しをしたことについては、
と述べており、あくまでも明渡しと原状回復義務は別々の義務であると判断しています。
以上を踏まえると、賃貸人が原状回復工事完了までの賃料の請求をできるかどうか、という点については、「契約書で明渡し前の原状回復義務の履行が合意されていると解釈されるか」という点がまず考慮されることとなります。
そして、明渡し前の原状回復義務が合意されていない場合は、あくまでも原状回復義務違反の問題となり、
「原状回復工事をしなければ新たな賃貸借契約の締結の妨げとなるか、また、この場合に原状回復工事完了までに通常必要な期間はどの程度か」という点を考慮して、工事完了までの期間の賃料請求の可否が判断されることになると考えられます。
※この記事は、2020年10月11日時点の情報に基づいて書かれています(2022年3月4日再監修済)。
北村 亮典
弁護士
こすぎ法律事務所
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