写真提供:アトリエハレトケ

日本の住宅は、他の先進国と比べて「断熱・気密性能」がかなり低くなっています。冬の脱衣所が寒いのも、結露が発生しやすいのも、この性能の低さが原因です。家を建てる際には、「断熱性能」の高さを重視し、健康で快適な生活を実現したいもの。さらに、「高気密・高断熱住宅」では家事も楽になることが明らかになっています。なぜ楽になるのか、住まいるサポート株式会社代表取締役の高橋彰氏が解説していきます。

「家事が楽になる」いくつもの理由

①冬の朝にベッドから起き出すのがつらくない

 

では、高断熱住宅で暮らすと、なぜ家事が楽になるのでしょうか?

 

この特集によると、家事が楽になるのにはいろいろな要因があるようです。その一つに、「冬の朝に起き出すのがつらくないこと」があります。

 

朝、お母さんが一番に起き出して、子どものお弁当と朝食の準備をしている家庭は多いと思います。冬には毎朝、勇気を出してベッドや布団から抜け出して、フリース等を着込んで、暖房をつけて暖まるのを待っている生活をしている方も多いのではないでしょうか?

 

高気密・高断熱住宅は、24時間全館空調にしても、家が魔法瓶にようになっているので、暖房費がそれほど気になりません。また、夜寝る前に暖房を切ったとしても、高気密・高断熱住宅ならば、翌朝、それほどは室温が低下していることもありません。

 

起き出すのが寒くてつらいということがなく、パジャマ姿のまますぐに活動を開始しやすくなります。

 

②冬のキッチンが寒くない

 

また、気密・断熱性能が低い家の冬のキッチンは、大抵とても寒いです。換気扇を回すと足元や腰回りに冷気が入ってきて、とても快適とは言えない環境になるのではないでしょうか?

 

普通の性能のマンションから、普通の性能の戸建住宅に引っ越して「後悔する」項目の上位に、キッチンの寒さが挙げられると思います。

 

高気密・高断熱住宅だと、冬に換気扇を回しても寒くなることがなく、キッチンがとても快適な環境になります。当然、家事が快適にできますよね。

 

③子どもが風邪をひきにくくなる

 

そして一番大きなメリットだと思われるのが、「子どもが風邪をひきにくくなること」です。

 

慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授や早稲田大学理工学術院創造理工学部の田辺新一教授らの研究で、「室内の暖かさや住宅の断熱性能」と「風邪のひきやすさ」には相関関係があることが明らかにされています。

 

「暖房方式と設定温度が居住者の健康に与える影響に関する研究」(※)によると、「無断熱相当の住宅でエアコンの設定温度が20.0℃のケース」では冬の風邪の発生率は43%です。それに対し、エアコンの設定温度が同じ20.0℃であっても現在の省エネ基準レベル(UA値0.87:東京・横浜・大阪などの温暖地域)に断熱改修工事すると、29%にまで下がります。

 

さらにZEH-Mと言われる高断熱仕様(UA値0.6:同上)にした上でエアコンの設定温度を23.0℃にすると、風邪の発生率はなんと16%にまで低下するというのです([図表2]参照)。

 

※ 集合住宅における住戸位置ごとのエネルギー消費量および冬季健康性の検討(第2報) 暖房方式と設定温度が居住者の健康に与える影響(2020.9.9 空気調和・衛生工学学会学術講演論文集)

 

[図表2]

 

上述の「だん」の記事でも、高断熱の家に住むママ友が「子どもが病気になりにくくなりました。保育園でインフルエンザなどが流行っても、うちの子どもは元気なのです。」と語っています。

 

子どもが風邪をひいて、お母さんが「自分がもっと予防すればよかった」と罪悪感を覚えることも、保育園からの突然のお迎え要請も減ります。仕事への影響が大幅に減ることも、大きなメリットではないでしょうか。

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