アルバイトにも年間300万円の新商品を市営る権限があるという。

アルバイトにも300万円の新商品の仕入れる権限を与えて始めて権限移譲ができたという。飯田屋6代目店主は「権限移譲は最高の教育」と語ります。しかも絶対に採算が採れる教育費と断言する理由を、著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)で明らかにします。

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提案してくれる社員の顔は輝いている

■スタッフすべてがバイヤー

 

僕たちの仕事は、モノを売るだけの「物販業」ではありません。料理道具を通じてお客様を喜ばせる「喜ばせ業」です。たくさんの喜びを提供するために、「この道具に出合えてよかった!」と満足してもらえる料理道具をいつも用意しています。

 

難しいのは、自分の目線で「これはきっと売れるはずだ!」と思って仕入れた商品は総じて売れないことです。逆に、お客様のご要望の声を集めたヒントノートを基に客観的な目線で仕入れると、おもしろいほど売れてしまうから不思議です。

 

飯田屋では全従業員に仕入れの権限を与えています。全員がバイヤーです。

 

一般的な店では、専任バイヤーのみが仕入業務を行います。店全体の商品構成を把握し、お客様の動向を捉え、売れる商品を売れるタイミングで仕入れる判断力を養うのは容易ではないからです。

 

しかし、飯田屋の従業員たちは店頭で、お客様のニーズ、不満、ライフスタイルまでたくさんの本音を聞いています。目の前にいるお客様の要望を、誰よりも把握しています。

 

だから、お客様からの要望に合う商品が即座に仕入れられるのです。

 

自分が仕入れた商品が、誰に、どのタイミングで、どう喜んでもらえたかを知ることは大切です。売れたときの喜びはひとしおですが、売れないときのつらさもひとしおです。

 

あるとき、「アヒージョ鍋を仕入れたい」という提案が従業員からありました。アヒージョとは、オリーブオイルとニンニクを使ったスペインの煮込み料理です。ホームパーティーなどで、気軽にアヒージョが楽しめる小鍋があるというのです。

 

「家庭でアヒージョをしたい人なんているの?」と思いながらも、仕入れ許可を与えると驚くほどに売れていきます。ご購入されるお客様はみんな嬉しそうな笑顔をしています。

 

「この包丁を仕入れたいんです! すでに仕入先も見つけてきました」という提案もありました。その包丁は前から仕入れたいと思っていた商品でしたが、海外から直輸入するしか方法がないと思い諦めていたものでした。

 

それを仕入先まで見つけてきたというのです。欲しい商品を探すリサーチ力と、仕入先を見つけ出す行動力に驚かされました。

 

「こんな商品があったら、喜んでもらえるはずです!」と提案してくれる従業員たちの顔はキラキラッと輝いていました。

 

「仕入業務は、僕一人ですべき仕事ではない。みんなに自由に仕入れができるように権限を委譲したほうが、飯田屋にとっても、お客様にとっても、いい商品を仕入れられるかもしれない」と大きな可能性を感じました。

 

とはいっても、仕入業務は在庫や資金管理の責任が伴う大きな仕事です。だから、もっと商品を見る目を磨き、知識を蓄えてもらう必要があります。

 

そこで、展示会などには全従業員を順番に連れていくことにしました。

 

以前は正直なところ、従業員を連れていくのは非効率だと考えていました。僕が一人で仕入れたほうが、飯田屋として間違いのないものを選べると信じていたからです。

 

しかし、お客様に心から喜んでもらえる店をつくる上では、むしろそのほうが非効率でした。

 

次ページ大きな枠があってこそ自由に動ける

※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

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