(※画像はイメージです/PIXTA)

幼少期の親との関係は、子どものその後の対人関係にも大きな影響を及ぼすといいます。一見、良好な関係にみえる親子には、実際には本音を語るのが怖いという「同調型ひきこもり」が潜んでいるという。精神科医の和田秀樹氏が著書『孤独と上手につきあう9つの習慣』(大和書房)で親子関係の重要性を解説します。

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「本音」と「建て前」を捨てるべきとき

■「アイツはバカだ」と思う心は自由

 

かつて、ビートたけしが「赤信号みんなで渡れば怖くない」と言って、世間から「よくぞ言ってくれた!」と大喝采を浴びたころにくらべると、現代は本音を言えない風潮が強まっていると感じます。みんなの前で本音を堂々と言える人もなかなか見かけません。

 

テレビを見ても、一部の毒舌キャラの人(この人たちも計算して言っているのでしょうが)を除くと、当たり障りのない耳触りのいい言葉の応酬ばかり。本音を口にする人は出てこないし、テレビ局側も本音を言う人をテレビに映し出すのを敬遠します。

 

すべてが予定調和の世の中です。

 

親までが、「こんなことを考えている子どもは悪い子に育つんじゃないか」「いい子はこんなこと言わないだろう」と考えて、無意識のうちに子どもの思考の自由を奪っています。予定調和の世の中に、知らず知らずのうちに染まっているのです。

 

たとえば、あなたの子どもが友達とケンカをして、「アイツ、頭悪いんだよ」「あんなバカ、知らない」などとあなたに訴えかけてきたとしたら、あなたはどう対応しますか?

 

良識ある親としては、

 

「そんなこと言うものじゃありません!」
「バカと言うほうがバカなんだよ」

 

などと、子どもの言うことをたしなめようとするのではないでしょうか。

 

じつは、ここにちょっとした落とし穴があります。

 

人間の思考は自由なのです。

 

子どもが誰かのことを「バカだ」「デブだ」と思うのは自由です。大人が心のなかで「あの娘とセックスしてみたいな」とか「アイツ、ぶっ殺してやりたい」と思うのも自由です。

 

もちろん、それを本当に実行してしまったら問題です。無理やりレ〇プしたり、本当に人を殺してしまったら大問題ですし、犯罪です。みんなの前で「バカだ」「デブだ」と言って相手を傷つけたり、いじめたりするのも問題です。

 

でも、心のなかで思うのは自由なのです。

 

子どもは自分の思った本音を、親にだからこそ語っている。そうであるはずなのに、それを封じてしまったら、子どもの思考の自由を奪うことになってしまいます。

 

■「建て前」子育ての大きな落とし穴

 

心理学の見地からすると、子どものころは母子一体型の心理が強く、思春期を迎えるにつれ本格的に分化していくと捉えることができます。

 

母子一体型である子ども時代は、何でも母親に話します。自分という存在を支えてくれるのが母親であり、母親に依存できるというのが正常な発達段階ですから、母と自分は一心同体。「お前の母ちゃん、でべそ」と言われたら、母親と一緒に自分が攻撃されていることになるわけです。

 

それがだんだん思春期になってくると、母親に言えない秘密が出てきます。

 

「好きな人ができちゃった」とか「オレ、エロ本買っちゃったんだ」とか、はたまた「親のこういうところが嫌いだ」とか、親には言いにくい秘密ができてくる。

 

秘密の共有相手が変わり、親に言えなくなったことは友人に話すようになるのです。

 

すると、「じつは僕も好きな人がいるんだ」「オレ、オ〇ニーしちゃったよ」「オレは親のこういうところが嫌いなんだ」と、お互いに秘密を打ち明け合うようになります。

 

こうした秘密の共有によって、その相手が「親友」という唯一無二の存在になっていく。これが基本的な発達モデルです。

 

次ページ精神的な自由を与える家庭と親の役割

※本連載は精神科医である和田秀樹氏の著書『孤独と上手につきあう9つの習慣』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。

孤独と上手につきあう9つの習慣

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和田 秀樹

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