コロナ禍が「がんの診断・治療」にもたらした「恐ろしい影響」【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの発生から今年で2年が経過しました。“コロナ禍”が長引くにつれて、コロナ感染症そのもの以外にも多くの問題が浮き彫りになっています。なかでも、今、医療界で問題視されているのは、コロナが「がん(癌)」の診断や治療に与える影響です。一体どういうことでしょうか? 内科医の齋藤宏章氏が解説します。

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コロナ禍で「がんの早期発見」に大きな支障

「コロナで医療機関は避けていました。検診も受けていなかったです。お腹の具合が悪くなったので、病院に行ったら検査をしたほうが良いと言われて…」

 

数ヵ月前から腹痛に気付いていたが、最近になり症状が強くなったのでようやく病院を受診、という流れで、大腸がんが見つかった患者さんと私のやりとりだ。すでに大腸を塞ぎかける状態まで腫瘍が進展し、即日に手術が必要な状態であった。

 

私が普段担当している消化器のがんが見つかるパターンは大きく分けて二つ。一つは冒頭のように、何か症状が出てから見つかるパターンだ。体調の悪さや、痛みなどの症状が出てから病院を受診し、がんが判明する。

 

もう一つは、検診やかかりつけ医での定期的な検査の結果、見つかるパターン。症状が出てから見つかるがんに比べて、症状のない時点で見つかる場合は早い段階で見つかる割合が高くなる。このため、医師会や自治体はがん検診の普及や啓蒙を行っているが、なかなか参加が進んでいないのが現状だ。症状がかなり進んでから受診する、冒頭のようなやりとりは医療現場ではありふれた光景だ。この状況にコロナ禍がさらに拍車をかけている。

2020年の「がんの診断数」は前年より8000件も減少

「今はコロナでこういう状況だし、落ち着いたら(検査を)受けようかなと思っています」

 

時折、患者さんから耳にする言葉だ。受診された患者さんに、がん検診を受けていますか?と問いかけるとこのような意見を聞くことがある。

 

実は、コロナ禍に入り、全国的にがんの診断数が減っている。日本対がん協会は、5つの主要ながん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸がん)の診断件数が2020年は2019年よりも8154件少ない8万660件であったという結果を発表した(※1)。いずれのがん種でも2020年は2019年よりも診断数が減少し、全体的に早期の段階でのがんの発見数が減少していた。

 

どうしてこのようなことになるのだろうか? 原因の一つに“がん検診”の中断があると思われている。ここで取り上げた5つのがんはいずれも検診や定期的な検査で発見することができるがん種である。これらのがんを見つけることのできるがん検診への参加者数がコロナ禍によって減っているのである。

 

同じく対がん協会は、これら5つのがん検診実施者数が2020年は2019年よりも30%減少していたことを明らかにしている(※2)

 

※1 日本対がん協会『2020年のがん診断件数 早期が減少 進行期の増加を懸念 日本対がん協会とがん関連3学会が初の全国調査』(2021年11月18日. https://www.jcancer.jp/news/12418)

※2 日本対がん協会『2020年の受診者30%減、約2100のがん未発見の可能性 日本対がん協会32支部調査』(2021年03月24日. https://www.jcancer.jp/news/11952)

仙台厚生病院消化器内科 医師

福岡県福岡市出身。福岡県立修猷館高校、東京大学医学部医学科卒業。
現在は宮城県仙台厚生病院消化器内科に勤務し、内視鏡をはじめとする消化器内科疾患全般の診療に従事。2019年より福島県立医科大学医学部博士課程にも所属している。

AIをはじめとする、内視鏡診断・治療に関わる研究や、消化器系のがん検診の実態と課題の解明に関わる研究、製薬企業の医師に対する謝礼金の実態を分析する研究など、医学領域の研究に広く取り組む。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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