相続税の税務調査は事前調査あり!預金や動産に注意を
税務署は税務調査の前にある程度事前調査をしていますが、どのように財産情報を入手しているのでしょうか。国税庁「平成30事務年度における相続税の調査等の状況」によると、申告漏れが多い財産は「現金・預貯金」と「その他(骨董品や動産)」です(図表1)。
図表1はあくまで「申告漏れ相続財産の金額の構成比」ですが、現金や預貯金・動産・骨董品の申告漏れが多いのは一目瞭然です。
預金通帳は金融機関に過去10年分を照会
預金通帳は、被相続人の住所地にある最寄りの各金融機関に、税務署から照会をかけることで判明します。預金通帳の残高だけではなく、金融機関がデータを保存している過去10年分ほどの預金やお金の動きを確認しています。
重点的に確認されるお金の動き
- 頻繁な預貯金の出入りの有無
- 不明な出金の有無
- 生前贈与財産の有無
- 海外送金の有無
たとえば、相続開始の2年前に親から500万円をもらったけれど、贈与税申告していなかった場合等はすぐに分かってしまいます。
さらには故人の金融資産データのみならず、相続人の資産状況まで調べることもあります。これは多額の生前贈与や相続人の職業等からして、不相応に高額な金融資産があるような場合、税務調査で質問を行うためです。
また、被相続人名義の預金通帳だけではなく、他人名義の預金通帳も調べられることもあります。
不動産情報は法務局や市区町村から入手
市区町村役場から税務署への死亡届と同じタイミングで、固定資産税の情報も送付されているといわれています。一定額以上の固定資産、つまり「土地や建物があれば相続税がかかりそうだ」ということを税務署は把握しているのです。
また実際に遺産分割が終わった後に不動産の名義を変更(相続登記)することで、法務局からの登録免許税等の情報を入手し、不動産の相続が発生を知ることもできます。
生命保険は保険会社の支払報告書で調査
生命保険については、生命保険会社から税務署に支払報告書が出ますのですぐに分かります。故人名義で支払いがあった生命保険金は、漏れることは少ないと思います。ただし「相続人が被保険者」になっている生命保険がある場合は、注意が必要です。
非上場企業オーナーの方は法人税申告書も見られます
非上場企業オーナーの方は自社株式も相続税対象となるため、自社株式の相続税評価を行い相続税の申告を行います。ただ、過年度の法人税申告書データが税務署にはあるため、企業オーナーの方は会社の資産内容についても全て税務署が把握しています。役員報酬の金額と金融資産額を比較して少なすぎないか等、法人税申告書の情報と連動した調査を行うことができます。
相続税の税務調査当日の流れ…何をどこまで調べるのか
相続税の税務調査における実地調査は、通常は事前に決めた日の朝10時から、被相続人か相続人の自宅で行われます。税務職員2名で来ることが多く、ほとんどの場合は1日で終了します。
<相続税の税務調査当日の流れ>
■午前10時~正午
税務署のマニュアルに基づいた質問がメイン、聞きたいポイントを中心にヒアリングされます。
■正午~午後1時
お昼休憩で、税務職員は午前の質問に対する答えを元に、午後にどういった話をするのかの打合せを行っています。税務職員は必ず外に出ますので、昼食を相続人側で準備する必要はありません。
■午後1時~午後3時頃まで
午後は具体的な資料の確認(通帳等)や、金庫やタンス等の貴重品の保管場所の確認を行った後に、具体的な指摘事項の通知があります。通常午後3時~午後5時頃までには帰っていきます。
非協力的な態度を示すと税務署職員の心象が悪くなってしまうので、協力的な態度で接するのがポイントです。
また、午前中に行った質問に対する回答について、書面にまとめたものへ相続人の一筆を求められることもあります。質問に回答した内容を書面にしたものですが、後で証拠の一部となります。必ず立ち会ってもらっている税理士に、書面の内容を確認してもらってからサインするようにしましょう。
税務調査は何をどこまで調べるのか?
相続税の税務調査(実地調査)では、税務職員は具体的に何を見ているのでしょうか? 事前調査との相違がないかの事実確認はもちろん、以下の内容を主に調べているので参考にしてください。
■金庫やタンス
申告されていない預金通帳・タンス預金・権利証などがないかを確認
■動産
申告されていない高価な骨董品や絵画が自宅にないか確認
■金融機関の景品
申告されていない金融機関がないかを確認
■預金通帳
事前調査と相違ないか確認
■ゴルフ大会のトロフィー
ゴルフ会員権の有無を確認
税務調査当日、午後からは具体的な資料の確認等が行われますが、その中で次のような質問があります。
税務署「故人(被相続人)が通帳や現金、印鑑を保管していた場所を見せてください」
しかし中には寝室やタンス等、プライベートな空間にまで税務職員に入ってほしくないという事情が存在する場合もあるでしょう。そのような際には次のように対応すると、認められることがほとんどです。
「プライベートな物も保管していますので、必要なものがあればここに持ってきます」
ただし保管場所を見せなければ、税務職員によっては「何か隠しているのではないか」という心象を持つ場合もあるため、特段の事情がなければ協力すると良いでしょう。
相続税の税務調査当日までの事前準備
ここまで解説してきたように、相続税の税務調査の当日には様々な資料の開示を求められます。スムーズに完了させるためにも、以下の資料の事前準備をおすすめします。
事前準備しておくと良い資料
- 相続税申告で使用した資料一式(原本)
- 被相続人の通帳一式(原本)
- 相続人の通帳一式(原本)
- 相続人所有の土地の権利証
- 不動産購入時の資料等の重要な資産に関する資料
- 相続人の認印
こちらから積極的に上記資料を見せる必要はなく、税務調査当日に税務職員に言われてから出せば大丈夫です。
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