相続税の税務調査でよく聞かれる質問とその意図
「税務調査の午前中は税務署からの質問を中心に進む」と解説しましたが、実際にどのような質問をされるのでしょうか? 税務調査当日によく聞かれる質問内容を、想定質問集としてまとめたので参考にしてください。
■被相続人の属性について
- 被相続人の出身地や職業、結婚の時期、趣味、月々の生活費など
- 被相続人が亡くなったときの状況(入院の有無・時期や病院名など)
- 被相続人の介護や入院にかかった費用
- 被相続人の日記の有無
- 被相続人の配偶者の財産状況
■相続人の属性について
- 相続人の出身大学や職業、住まいなどについて
- 相続人の家族(子供、配偶者)の年齢や学校名、職業など
- 相続人の家の購入金額や売却金額(過去に住んでいたものも含めて)
- 相続人の投資状況(証券口座を持っているか、どれ位株式や投資信託へ投資しているか等々)
■被相続人と相続人の財産関連
- 被相続人がどのように相続財産を築いたか
- 被相続人や相続人は貸金庫を持っているか
- 被相続人や相続人が取引のある金融機関と支店名(過去に使っていたものを含めて)
- 被相続人の死亡直前の財産管理は誰が行なっていたか(書類や通帳の管理)
- 相続開始直前で下ろした現金の具体的な使い道
- 生前に贈与を受けたことがあるか
■相続税の申告関連
- 相続税を納税した金融機関はどこですか
- 相続人と税理士との関係
税務調査の質問の意図は「仮装・隠蔽の意思確認」
税務調査で税務職員が質問する意図は、相続人の仮装・隠蔽の意思を確認するためです。実地調査で午前中に質問をして午後から具体的な調査に入るのはこのためで、あえて分かっている質問をすることも多々あります。意図的に相続人が仮装・隠蔽の意図があったのかなかったのかで、ペナルティの追徴課税の税率が大きく変わります。
■仮装・隠蔽の意図がなかった場合
過少申告加算税10%
■仮装・隠蔽の意図があった場合
重加算税40%
心配なことがある場合には、税務署から不利な指摘を受けないためにも税理士に相談にいくとよいでしょう。 税務調査が終了した後、指摘事項がなければ何もやることはありません。
相続税の税務調査で指摘!修正申告&ペナルティあり
相続税の税務調査で指摘事項があった場合、修正申告を行う必要があります。ただし修正申告は専門性が高いため、必ず相続税に強い税理士に依頼をしてください。そして税務調査で指摘事項があった場合、追徴課税のペナルティが課せられます。
■追徴課税のペナルティ
延滞税+加算税(過少申告加算税・無申告加算税・重加算税のどれか)
延滞税
延滞税とは、相続税の納付期限までに相続税を納めなかった場合に課せられる税金で、いわゆる延滞利息のような税金です。相続税の税務調査が入るのは、相続税の申告期限から2ヵ月以上が経過している状況かと思います。延滞税は本来「年14.6%」という高い割合ですが、平成26年1月1日以降は「特例基準割合+7.3%」のどちらか低い割合となります。
少し分かりづらいので、国税庁「延滞税の割合」に記載されている延滞税率をみていきます(図表2)。
加算税は3種類!ケースによって税率が異なる
相続税の税務調査で指摘をされると、加算税として「①過少申告加算税」「②無申告加算税」「③重加算税」のいずれかが課税されます。
①過少申告加算税(10%)
過少申告加算税とは、名称のとおり本来申告すべき相続税額よりも、当初の相続税が過少だったことに対するペナルティです。当初の申告では財産を隠したりする意図がなく、うっかり漏れていたケースや評価を間違えていたようなケースで課税されます。
ただし新たに納める税金が、当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%となります。
②無申告加算税(15%)
無申告加算税とは、相続税の申告期限内に相続税申告書を提出していなかったことに対するペナルティです。 隠蔽の意図がなく、申告を失念していたようなケースで課されるペナルティです。
③重加算税(35%)
重加算税とは、隠蔽行為により不当に相続税を逃れるような行為をした場合に課されるペナルティです。
加算税の中でも最も重い罰則規定で、隠蔽のために無申告だった場合は税率が40%となります。
税務署の指摘に納得できない場合の対応
相続税の税務調査終了後に税務署から指摘を受けた場合、その指摘内容に納得できない場合には次のような対応方法があります。
STEP1:税務署長に対する異議申し立て
税務署の指摘について不服があるときに、処分を行った税務署長等に対して異議申し立ての手続きを行います。
ただし、税務調査結果の通知を受けた日の翌日から3ヵ月以内に、手続きを行う必要があるので注意しましょう。
税務署長に対する異議申し立てに、法律上審査期間の定めはありませんが、通常は3カ月程度で結果がでます。
異議申し立てにより納税者の主張が認められる割合は約10%程度となっており、90%は納税者が負けてしまいます。それでも10%程度は納税者の主張が認められているので、納得できないことについては毅然とした態度で主張を行うとよいでしょう。
この異議申し立ての決定内容にも納得できない場合には、次のSTEP2になります。
STEP2:国税不服審判所への不服申し立て
税務署長への異議申し立て結果についても納得できない場合には、国税不服審判所という国税庁の特別機関に不服申し立ての審査請求ができます。
国税不服審判所は税務署や国税局からは独立した組織となっていますので、客観的な観点から税務署の処分内容を審査します。異議申立てに対する税務署長等の決定の通知を受けた日の翌日から1ヵ月以内に、国税不服審判所長に対して「審査請求」をしなければならないという期限があります。
ただし国税不服審判所の審査請求の結果、納税者の主張が認められる割合は約10%で、納税者にとってはかなり厳しい戦いであることが分かります。
通常は国税不服審判所への請求資料の作成段階から、相続税に詳しい弁護士や税理士が関与して主張していくケースが多いです。
【参考】
さらに不服があるときは、裁判所に訴訟を起こすこともできます。審査請求に対する国税不服審判所長の裁決があった後の処分に、なお不服があるときは、その通知を受けた日の翌日から6ヵ月以内に裁判所に対して訴えを提起することができます。
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