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相続税の申告期限までに遺産分割ができない場合は、法定相続分で分割したものとして申告します。また申告期限までに遺産の一部だけが分割できないケースもあります。このような場合、どうすればいいのでしょうか。みていきましょう。

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未分割時の相続税申告は法定相続分で分割すると仮定

まず、相続税の申告期限までに遺産分割ができない場合の申告方法を確認します。

 

相続税法第55条では、未分割の遺産がある場合は、民法による法定相続分で各相続人が取得したものとして課税価格を計算すると定められています。また、その後、遺産分割があって課税価格が変わった場合は、修正申告や更正の請求などをすることを妨げないとされています。

 

したがって、申告期限までに遺産分割ができない場合は、法定相続分で遺産分割した仮計算をして、期限内に申告します。その後、遺産分割があって相続割合が変わった場合は、修正申告や更正の請求をします。

 

なお、法定相続分で分割して期限内に申告する場合は、必ず「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出します。この見込書を提出すると、分割が決まった後の再申告で節税効果の高い特例(小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減など)を適用することができます。

 

相続税法

(未分割遺産に対する課税)

第五十五条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第三十二条第一項に規定する更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。

 

出所:相続税法 第五十五条(未分割遺産に対する課税)

一部未分割のときの相続税申告

遺産相続では、相続税の申告期限までに一部の遺産の分割ができないことがあります。

 

一部の遺産が未分割の場合に相続税の申告でその未分割遺産を分割する方法としては、積み上げ方式と穴埋め方式の二通りの考え方があります。

 

この章では、以下の【例】をもとに、積み上げ方式と穴埋め方式による未分割遺産の分割方法を解説します。

 

【例】

遺産総額(相続税評価額)は1億円で、相続人は故人の子供2人である(法定相続分は1/2ずつ)。

遺産分割協議で相続人Aは3,000万円、相続人Bは2,000万円の遺産を相続することになったが、5,000万円の遺産は未分割となっている。

 

[図表1]未分割の遺産の事例
 

 

積み上げ方式…未分割遺産のみ法定相続分で分割

積み上げ方式は、未分割の遺産を法定相続分に応じて分割する方法です。【例】の場合では、分割済みの遺産をどのような割合で分けたかに関係なく、未分割遺産である5,000万円を相続人Aと相続人Bに2,500万円ずつ分配します。

 

[図表2]事例の遺産相続を「積み上げ方式」で分割した場合

 

穴埋め方式…分割済の遺産を含めて未分割遺産を分割

穴埋め方式は、分割済みの遺産を特別受益ととらえます。そのため、分割済みの遺産を未分割の遺産に含めて、遺産の全体を法定相続分に応じて分割します。

 

【例】の場合では、分割済みの遺産と未分割の遺産をあわせて、相続人Aと相続人Bに5,000万円ずつします。相続人Aはすでに3,000万円の遺産を受けているので、相続人Aには未分割遺産のうち2,000万円を分配します。相続人Bには3,000万円を分配し、両者はそれぞれ5,000万円を相続することになります。

 

[図表3]事例の遺産相続を「穴埋め方式」で分割した場合

 

もし、分割済みの遺産がすでに法定相続分を超えている相続人がいる場合は、その相続人は未分割遺産を取得しない前提で分配します。

 

[図表3]事例の遺産相続…分割済みの遺産がすでに法定相続分を超えている相続人がいる場合

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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