※画像はイメージです/PIXTA

富裕層であれば多くが気になる「相続税の税務調査」。その実態や対象者の選定方法に加え、税務調査が来やすい時期や時効について解説します。

相続税の税務調査の概要…時期や時効について

「相続税の税務調査」と聞くと、何だかとても悪いことをして調べられるイメージをされるかもしれません。ただ、実際はきちんと相続税申告をしていても税務調査が行われることもあるので、あまり怖がらずに冷静な対応を心がけましょう。

 

相続税の税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2種類がありますが、大半の税務調査が後者の「任意調査」です。

 

■任意調査

税務署から事前連絡があり、当日は質問に答える形式の調査。ただし不当な拒絶はできない。

 

■強制調査

国税犯則取締法に基づいて、悪質な脱税犯の家にガサ入れをするハードな調査(マルサのイメージ)。

 

相続税の税務調査は事前に税務署から連絡がある

相続税の税務調査の対象者に選定されると、事前に税務署から連絡があります。

 

  • 相続税申告を税理士に依頼していた場合…担当税理士に連絡
  • 相続税申告を自分でした場合…相続人に連絡

 

この連絡の時点で具体的な指摘や内容は行われず、実地調査を行う日程を決めるにとどまります。税務調査の連絡が来ると不安な気持ちになる方が多いと思いますが、過度に心配しなくてもよいでしょう。

 

相続税の税務調査の時期は1~2年後の「秋」が多い

相続税の税務調査の時期は、相続税申告をした1~2年後の秋頃が多いです。

 

税務署には日々たくさんの相続税申告書が提出され、それを順番に審査していくため、申告後すぐには税務調査ができないのです。また税務署は7月に大きな人事異動があり、人事異動後の8~11月が調査先選定のピーク時期となります。8~11月に選定しスタートした税務調査を、翌年の6月までに終結させるように動いていくため「秋」が多いのです。

 

相続税の税務調査の時効は5~7年

相続税申告にも時効(除斥期間/じょせききかん)があり、ケースによっていつまでが対象期間なのかが異なります。

 

  • 相続税の時効…相続税の法定申告期限から5年
  • 故意の脱税行為や無申告…相続税の法定申告期限から7年

 

この相続税の法定申告期限とは「相続発生を知った翌日から10ヵ月以内」のことで、被相続人が亡くなった日ではないのでご注意ください。

相続税の税務調査の対象者はこうして選定されている

「相続税申告をして税務調査が入るのは10人に1人の確率」と冒頭で説明しましたが、税務署は対象者をランダムに選定しているわけではありません。相続税の税務調査の対象者に選定されやすいのは、以下の2つのパターンです。

 

税務調査の対象者に選定されやすいパターン

①相続税申告書の計算や評価方法に誤りがある

②相続税の申告書に計上されていない、漏れている財産がある

 

「相続税の税務対象は富裕層だけでしょう?」と思われる方が多いかと思います。実際は不正申告を抑制するための牽制の意味合いを含め、一般層への税務調査もしっかり行われています。

 

①相続税申告書の計算や評価方法に誤りがある

相続税申告書に記載されている財産に漏れはないけれど、相続税の計算や相続財産の評価方法に誤りがあるケースです。

 

たとえば…

  • 相続税申告の経験が浅い税理士が担当した場合
  • 税理士に依頼せずに自分で作成した場合

 

ちなみに、財務省が発表した「平成30年度国税庁実績評価書」によると、平成30年度の相続税申告件数のうち、税理士が関与しない相続税申告は15%となっています。相続税申告書は第1表から第15表まであり複雑ですので、相続税に慣れている税理士以外が最後まで作成するとミスが起きやすいという要因があります。

 

②相続税の申告書に計上されていない、漏れている財産がある

相続税申告において財産として計上すべき財産(預貯金・動産・不動産・株式等)が、漏れている(可能性が高い)ケースです。

 

よく相続人の方から「税務署はなぜ申告漏れの財産の有無や可能性が分かるのですか?」という質問を受けますが、税務署は被相続人の過去の所得税の確定申告書や、給与の源泉徴収票等のデータを収集しています。被相続人の過去の収入から、明らかに相続税が発生することが見込まれるケースでは、すでに税務署から目をつけられている可能性が高いです。

 

また、財産を意図的に隠そうとしても見つかってしまう可能性が高いため、当初の申告がしっかりと財産漏れがないことを確認して申告書を提出することが重要です。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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