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患者を診て寄り添う地域医療の存在感
■診断力の高さと治ることへの手助け
第2に、何よりも患者の目的である『治ることへの手助け』は最重要である。ただし、慢性疾患を含め治るものばかりではないし、治療も長期化するものが多い。
しかし、どこにいってもわからなかった病気が明確になり治療が開始できる、改善されなかった症状が良くなる、不安がなくなる。これらは診断力の高さのあらわれであり、最大の集患ポイントである。そして、これらの情報は患者のクチコミにより家族や知人に伝えられ、まわりを巻き込み周知されていく。
■患者本位の丁寧な対応
第3に、『患者本位の丁寧な対応』は、専門性の高い診療と同様に患者の強い要望である。
杉本院長は、「患者の思いを汲み取りながら、患者を自分の家族だと思うことが診療の基本だ」と話している。患者へのポジティブな関心と積極的な傾聴は患者の信頼を導き、信頼は患者の家族全体に伝わる。また、医師やスタッフによる患者への接触は、「手当する=治療する」の言葉どおり、親身になり治そうとする姿勢を伝える手段としても有効である。医師やスタッフの患者を思う心と温もりは、手を通して患者に伝わる。
■待合室での患者の会話と非言語的な情報
第4に、待合室での患者同士の会話は信頼性の高い情報であり、待合室は評判を形成する有効な場所である。
待合室で待っていたある患者は、診察室から診療を終えて出てくる他の患者の顔を伺っていた。その患者に話を聞くと、出てくる患者の顔が安心した笑顔だと、「やっぱりあの医師は良い治療をするのだな」と思い、その医師への信頼が高まるのだと言う。待合室では言語的な情報だけではなく、他の患者の表情など非言語的な情報も、患者にとり意思決定につながる有効な情報である。
すべてが統合された時、「最期まであなたの患者でいたい」と患者は思うものだ。
(3)まとめ
「患者のデータとは何を指すのか、どこまでをデータと捉えるかで診療は大きく変わる。データは、検査の数値や画像などの結果だけではない。そこには、患者の訴えや症状も含まれており、それは患者から聞き出さないとわからない。そして、そのためには医師の聞き出す力がないと成立しない。
例えば、CTと腹部所見が一致しない場合は、なぜ違うのか疑問を持ち、患者から聞き出さないと正しい診断はできず、病気を治すことはできない。」勤務する大森眞澄医師は、患者とのコミュニケーションと情報収集の重要性を語っていた。
病気を診ずして病人を診よ。病気ではなく、患者を背景からしっかりと診て寄り添う地域医療を支えるかかりつけ医の存在は、患者の安心感と信頼を導き、定着した継続診療行動を導くであろう。
杉本ゆかり
跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長