「現地に行きました」というだけの見学
もちろん、どのような介護支援をしてくれるのかは、入居検討の対象となりますが、そもそも、老人ホームに関する知識と教養がないため、通り一遍のスペックだけの判断基準だけでは、適切な検討などできるはずもなく、「いちおう検討しました」というお茶を濁すレベルの検討に留まります。
中には、実際に老人ホームに見学に行く人もいますが、これまた、老人ホームのどこをどのように確認しなければならないのか? ということに考えが及ばないため、「現地に行きました」「説明を聞きました」というだけの見学で終わってしまいます。
したがって、ホーム側の説明を一方的に聞いて、それを鵜呑みにして決めてしまいます。だから、入居後「話が違う」「考えていたことと違う」「適切な介護支援をしてくれない」といった誤解が生じ、ホーム側に文句を言うことになるのです。これが、老人ホーム選びをしている多くの人の実際の姿です。
私に言わせれば、老人ホームのことをしっかりと学習し、老人ホーム選びを実践すれば、避けることができるトラブルはたくさんあります。ちなみに、多くの子世代が、入居直後にホーム側に苦情を言うケースの多くは、「ここで私が頑張らないで、いったいいつ頑張ればいいのか」という気持ちからだと私は推察しています。自分が親のために選んだ老人ホームでしっかりとしたケアをやってもらえない場合、なんだか自分がミスを起こしたような気持ちになり、強い不満が生じるのです。
さらに、多くの入居相談者、つまり子世代にとって、老人ホーム選びに自分の時間とお金をたっぷりとかける気になれないという現実があります。その理由は、「自分のこと」ではないということと、自分の子供や家族のことで精いっぱいで、親のことにまで時間もお金も回すことができないからです。
自分の結婚式なら、たとえ仕事が忙しくても、何度も何度も会場に足を運び、提供する料理の試食をしたり、衣装選びをしたり、はたまた音楽はどうする? 飾りつけは? 招待客のコメントは? というように、納得がいくまで時間と経費をかけて取り組みます。しかし、人様の結婚式には、大した興味は湧きません。せいぜい、過去に参加した結婚式の経験からその場の評論家になったり、このサービスはいくらかかる、というような話題で盛り上がるのが関の山です。
老人ホーム選びでも同じです。多くの場合、探している人は当事者ではありません。家族です。おおむね子供です。実は、ここに大きな問題が潜んでいると考えるべきなのです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役