(※写真はイメージです/PIXTA)

日本には「後継者がいないだけで、廃業するにはもったいない会社」がたくさん存在しています。廃業を選ぶことによって、後継者問題から解放されたり、従業員の雇用や会社を守らなくてはいけないというプレッシャーがなくなったりなどのメリットもあるでしょう。とはいえ、廃業したオーナーたちの話を聞くと、廃業は想像以上に大変な選択肢であることが分かります。自らも「引き継ぐ側」として事業承継を経験した筆者が、「廃業のリアル」を解説します。

廃業は「悲惨な結末」になりやすい

私の知り合いには、事業承継デザイナーで廃業支援のコンサルタントでもある奥村聡さんがいます。NHKスペシャルで「会社のおくりびと」として取り上げられたこともあるので、知っている読者もいるかもしれません。

 

彼が主催する「着地戦略会」という定期的に開かれる会合で、廃業のリアルを勉強のために聞かせてもらいます。聞けば聞くほど「思っている以上に廃業って大変なんだな」と思わされます。

 

彼によれば、廃業を決めた場合それを従業員に伝えるタイミングや伝え方が最も難しいそうです。

 

長年働いてきた従業員は、たとえ債務諸表が読めなくても会社の業績が右肩下がりであることは肌感覚で分かっています。それでも希望を捨てずに、会社のため家族のために頑張ってくれています。そういう状態で「実は廃業します」と伝えなくてはならないわけです。

 

あまりドライに伝えると「自分たちのことを大切に思ってくれていない」「家族同然と思ってきたのに、社長は自分都合で切り捨てるのか」と反感を買いますし、ウェットに伝えすぎても悲しみが大きくなって、廃業後の転職活動に気持ちを切り替えることができなくなります。

 

廃業するまでに時間が残っていたとしても伝え方を間違えると社員たちの気持ちがバラバラになっていき、職場の空気が荒んでギスギスしていきます。「消化試合」をこなす感覚で取引先や顧客に不誠実な対応をする者が出てきたり、ひどい場合は「退職金代わりに」と会社のお金や備品を持ち逃げするなどの犯罪行為に及ぶこともあると言います。そうなると、今までの良い思い出も全部壊れてしまいます。

 

また、取引先の銀行にも伝えなくてはなりませんが、下手をすると当座預金の手形がいきなり止められてしまい、不渡りを出して資金繰りに窮することもあります。すると、ソフトランディングでゆっくりと廃業するつもりがドンと落下してしまい、望みもしない倒産に追いやられることになっていきます。

 

従業員に給与や退職金が払えず、取引先にも買掛金を払えずに廃業してしまった例では、オーナー家族が地元に住めなくなり、夜逃げに近い形で出て行ったということもあったようです。廃業というのは簡単なように見えて、結構、悲惨な結末になりやすいのだと知りました。

 

奥村さんも円満な廃業は至難の業で、多方面に気を使わなくてはならないため、神経がすり減ってボロボロになるオーナーが多いと言っていました。私自身も話を聞いてゾッとし、「絶対に廃業は避けなくてはいかん」と思いました。もし、廃業の道しか残っていないのであれば奥村さんのような専門家に相談し、その後の人生まで含めたアドバイスを受けるほうが賢明です。

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※本連載は、宮部康弘氏の著書『オーナー社長の最強引退術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

廃業寸前の会社を打ち出の小槌に変える オーナー社長の最強引退術

廃業寸前の会社を打ち出の小槌に変える オーナー社長の最強引退術

宮部 康弘

幻冬舎メディアコンサルティング

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