(※写真はイメージです/PIXTA)

日本には「後継者がいないだけで、廃業するにはもったいない会社」がたくさん存在しています。廃業を選ぶことによって、後継者問題から解放されたり、従業員の雇用や会社を守らなくてはいけないというプレッシャーがなくなったりなどのメリットもあるでしょう。とはいえ、廃業したオーナーたちの話を聞くと、廃業は想像以上に大変な選択肢であることが分かります。自らも「引き継ぐ側」として事業承継を経験した筆者が、「廃業のリアル」を解説します。

「企業寿命を超えた会社」は「廃業しても仕方ない」?

ここで、企業の寿命について考えてみたいと思います。色々な中小企業のオーナーと話していると「もうこの会社も40年になる。そろそろ寿命だ」と仰る方が時々います。寿命だから廃業やむなしと考えるべきではありません。

 

今回本稿を書くにあたって、私も企業の寿命について調べてみました。

 

「企業寿命30年説」というのが言われてきましたが、その端緒となったのは1983年に『日経ビジネス』が掲載した記事だったとか。企業には創業期、成長期、成熟期、衰退期があり、1サイクルが大体30年とする説です。

 

ソースが確認できるものとしては、『中小企業白書2011年』に帝国データバンクの資料をもとに作成された「企業の生存率」があります。これを見ると、10年後の生存率は70%、20年後は52%、28年後は45%となっています。

 

事業承継の仕事をしている私の実感としても、30年後に0.021%より45%のほうが正しいように思います。帝国データバンクの統計に含まれない企業も含めると、本当の生存率はもう少し下がるかもしれません。

 

いずれにしても30年もたない会社が過半数で、業歴30年以上は「老舗」の扱いになります。つまり30年以上続いてきた会社はそれだけで希少価値があり、潰してしまうのは惜しいのです。

 

そもそもこれだけ人々の価値観やニーズの移り代わりの激しい時代に、30年40年と事業を続けて来られたということは、そのビジネスモデル自体に力があることの証明です。

事業承継は、会社を「蘇らせる」チャンス

企業の寿命に関しては「社長の年齢が高くなると企業の業績が下がる」という相関関係を裏付ける東京商工リサーチの2020年のデータがあります【図表】。

 

出典:東京商工リサーチ
【図表】社長年齢別 業績状況 出典:東京商工リサーチ

 

社長の年齢別に直近の企業業績を見ると「増収」は若い世代ほど割合が高く、年齢が上がるほど低くなっています。

 

70代以上で増収の企業は4割もありません。また「赤字」や「連続赤字」は70代以上の割合が最も高くなっています。

 

このことから社長の高齢化と業績不振には関連性があると言えます。年齢を重ねると新しいチャレンジをすることが減り金融機関も融資をしてくれなくなるため、どうしても事業が縮小傾向になってしまうと予想されます。

 

逆に言えば社長が高齢化して業績低下している会社は、若い後継者にバトンタッチすることで蘇る可能性が高いのです。

 

企業の一生を創業期、成長期、成熟期、衰退期とするなら、衰退期から逆戻りして2回目の成長期や成熟期を経験するイメージです。あるいは、衰退期に入る前にバトンタッチができれば、業績低下を経験することなく好調が続く可能性もあります。

 

私自身も今の会社を継いだ理由の一つが、70年という長い歴史を持つ会社であったことでした。70年前の創業者たちが目指したロマンを受け継ぎ、100年企業にしたいと思いました。

 

人間にも寿命があるように、会社にも寿命があると考えるのは自然な発想ですが、人間は医学や科学の進歩によって延命を可能にしてきました。江戸時代の平均寿命は30歳だったものが、今は80歳を超えています。100歳超えのご長寿も8万6510人となりました(2021年9月1日時点)。

 

企業の寿命も同じく、事業承継によって延命することは可能です。「寿命だから」を言い訳にして廃業してしまってもいいものでしょうか?

 

 

宮部 康弘

株式会社南星 代表取締役社長

 

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※本連載は、宮部康弘氏の著書『オーナー社長の最強引退術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

廃業寸前の会社を打ち出の小槌に変える オーナー社長の最強引退術

廃業寸前の会社を打ち出の小槌に変える オーナー社長の最強引退術

宮部 康弘

幻冬舎メディアコンサルティング

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