(※写真はイメージです/PIXTA)

日本には今「廃業するにはもったいない会社」が数多く存在します。そもそも、事業承継にはどのような方法があるのでしょうか。一般的な選択肢である「親族内承継」や「社内承継」、「第三者へのM&A」の3つについて、メリット・デメリットを改めて見ていきましょう。

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事業承継の主流は親族内承継、社内承継、M&A

事業承継には大きく2つの種類があります。1つは親から子へのように、経営者家族の中から後継者を選ぶ方法です。親族内承継と言います。

 

もう1つは、親族外に承継する方法で第三者承継と言います。第三者承継には、自社の社員を後継者にする「社内承継」と、外部に会社を売却する「M&A」があります。

「親族内承継」は日本で最多の選択肢

親族内承継は日本で最も盛んに行われてきた事業承継の方法です。承継先は子が多いですが、配偶者や子の配偶者、兄弟姉妹、孫、その他の親族などに承継しているケースもあります。

 

世界中に同族経営・家族経営の企業がありますが、日本は特に多く、全企業の約96%が同族会社です(国税庁2019年度会社標本調査結果より)。家長制度が長く続いてきた歴史から、家業を長子に継がせる例が多いためです。

 

近年では第三者承継が増えてきていますが、それでも中小企業の55.4%は親族内承継によって事業承継をしています(中小企業白書2019年より)。

 

ちなみに日本ではトヨタ自動車、日本ハム、任天堂、サントリーなどが同族経営で業界トップに成長してきました。海外では、アメリカのウォルマートやフォード、韓国のサムスン、スイスのスイス銀行などが同族経営として知られています。

 

■親族内承継のメリット

代々同族経営している会社では後継者が幼少の頃から将来、会社を継ぐことを前提とした家庭教育が行われます。後継者自身も小さい頃から「お前は将来、お父さんの跡を継いで社長になるんだよ」などと言われているので、早くから心構えができており、スムーズに承継が進みやすい点がメリットです。

 

次に、社内外の関係者(従業員や取引先など)から後継者として受け入れられやすい点もメリットです。

 

将来の事業承継を見越して後継者の子を自社に一般社員として入社させ、事業を勉強させるケースもよくあります。あるいは、広く世間を学ばせるために社外で修行させて、一人前になった頃に自社に取締役で採用し、事業承継の準備に入るケースもあります。

 

いずれにしても子どもが会社を継ぐことは社内外での了解事項になっているため、異議を唱える関係者は少ないと考えられます。先代が育てた幹部たちが、事業承継後も後継者の子をブレーンとして引き続きバックアップしてくれるような体制づくりもできます。

 

また子への承継であれば自社の株式を売買ではなく、相続や贈与によって後継者の子に渡せます。

 

相続や贈与による親族への資産移転については、様々な税制面での特典が設けられているため、売買による移転よりも引き継ぎやすくなっています。

 

■親族内承継のデメリット

親族内承継のデメリットとしては、家族の中に経営者としての資質や能力を備えた子がいるとは限らない点です。

 

昔は子どもの数も多かったので誰か一人くらいは後継者になれる子がいたのですが、今は1世帯当たりの子どもの数は1~2人が普通です。少ない候補の中に後継者に相応しい子がいる可能性は高くないと思います。

 

経営者としての能力に欠ける子を無理に後継者にしても、事業承継後に経営を回していくのに苦労します。従業員や取引先からの信頼も得にくく、従業員が辞めて行ったり取引を終了されたりすれば、銀行融資も受けられなくなってしまいます。

 

生き方や価値観が多様化している今「長男だから家業を継ぐ」という考え方そのものが時代に合わなくなってきています。経営者としての素質があっても「自分の好きな仕事をしたい」「個人保証などのリスクを負いたくない」などの理由で事業承継を断るケースも少なくありません。

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※本連載は、宮部康弘氏の著書『オーナー社長の最強引退術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

廃業寸前の会社を打ち出の小槌に変える オーナー社長の最強引退術

廃業寸前の会社を打ち出の小槌に変える オーナー社長の最強引退術

宮部 康弘

幻冬舎メディアコンサルティング

赤字、零細企業でも後継者は必ず見つかる! 経営権を譲渡し、財産権を残す“新しい事業承継の形”とは? 後継者候補探しから承継のスキームまでを徹底解説。 後継者不在で、廃業してしまう会社が日本にはたくさんありま…

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