(※写真はイメージです/PIXTA)

半世紀ものあいだ「生産性が低い」と言われ続けている日本ですが、決して「ハイパフォーマー」な人材がいないわけではありません。ハイパフォーマーを雇用できても「台無し」にしてしまう、日本ならではの事情について見ていきましょう。

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「ハイパフォーマーを育てる」という能がない日本

日本企業にはハイパフォーマーを育てるという考え方がなかったので、日本企業の多くはせっかくハイパフォーマーを採用しても、その多くを台無しにしてしまっています。

 

一方、シリコンバレーのハイテク企業などでは、ハイパフォーマーこそ教育・育成すべきだと考えています。ハイパフォーマーを短期間で育て上げることで、彼らを新規事業の責任者に抜擢し、その結果新規事業を早く拡大できるからです。またハイパフォーマーを一人でも多く育てることで、彼らが組織を牽引していきますから、会社全体のパフォーマンスを大幅に向上することができます。

 

逆にいえばハイパフォーマーほど大変な仕事を任されることになるわけですが、彼らはそもそもビジネス適応力が高いためそのような仕事も十分にこなせます。またその苦労に見合った報酬も受け取ることができます。

 

日本企業の多くはハイパフォーマーとアベレージパフォーマーの仕事が同じですから、ハイパフォーマーほど楽に仕事ができてしまい、成長につながりません。ただし日本でも外資系企業は本国と同様の人材開発が行われる傾向がありますし、ベンチャー企業もハイパフォーマー重視の育成や採用を行うようになってきてはいます。

 

また日本企業では、会社の成長が鈍化し始める直前ぐらいに大きな組織改正を行い、大幅な人事異動を実行することで成長カーブを維持しようという人事戦略が採られます。これ自体は悪いことではありませんが、問題はこの異動の考え方やタイミングがアベレージパフォーマー向けに設定されているということです。ハイパフォーマーもこのようなタイミングで異動されることになり、成長できない期間が長くなる傾向があります。ハイパフォーマーはもっと積極的にさまざまな経験をさせるほうが成長するのです。

 

年功序列型の人事制度では、早期昇格は難しいですが、裁量権を拡大したり、他社や海外と共同のプロジェクトを任せたりするなど、特別なチャレンジの機会を与えることはできるはずです。しかしそれに消極的な企業が多いのは、外部を知って転職してしまうハイパフォーマーが多いからです。しかしこれも上手に行えば、ハイパフォーマーたちのやる気に火を付けるキッカケになります。やり方次第なのです。しかし良いやり方を知る企業は少ないといえます。

 

日本企業は人材育成に熱心で研修制度が整っているとよくいわれますが、それはアベレージパフォーマー向けの話です。むしろハイパフォーマーの潜在力を引き出すためには役に立たない制度であることが多いのです。アベレージパフォーマーの育成も大切ですが、会社全体の生産性を高めるためには、ハイパフォーマーの育成にもっと力を入れて、彼らに会社全体を牽引してもらうことを考える必要があるのです。

 

日本企業では、後輩の指導や部下の育成をハイパフォーマーに丸投げする傾向があることも、ハイパフォーマーの成長を妨げています。ビル・キャンベルが開発した1on1ミーティングのような確立された技法に従うならまだしも、育成法も提供せずにただ部下を育てよと言われると、ハイパフォーマーにとっては単に自分よりパフォーマンスの劣る人に目線がいくだけになり、そうでなくても自分のパフォーマンスに安心しきっているハイパフォーマーの目線をさらに下げてしまうことになりがちです。

 

もちろん指導や育成も重要なことですし、それを通して学べることも多々あるとはいえますが、ほかにもっと高度なことを学べる機会があるのなら、ハイパフォーマーにはそちらへのチャレンジを促すべきなのです。

 

ただ日本のマネージャーにはプレイングマネージャーが多いので、実際に部下の育成に時間をつくれている人は少ないという実態があります。

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※本連載は、梅本哲氏の著書『サイエンスドリブン』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事

サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事

梅本 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

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