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ベテラン人材が「ローパフォーマー化」してしまう背景
■中高年世代で「新技術にキャッチアップできずに悩む人」が増加
40代半ば以上の人材の扱いに課題を抱えている企業が増えています。さすがにパソコンが使えないというビジネスパーソンは少数派になりました。しかしここ10年ぐらいのデジタル化の流れで技術の進歩が日進月歩となり、中高年の世代で新技術にキャッチアップできない人が増えているのです。一般の企業でもIoTやAIといった新技術を活用した製品やサービスを提供するようになりました。このことによりIT企業に限らず、新技術にキャッチアップできなくて悩んでいる人が増えています。ましてやIT業界ではもっと深刻です。
生涯現役のプログラマーやシステムエンジニアとして、先端技術に取り組む超人的なITエンジニアも存在しますが、ごく一部です。多くのITエンジニアは、キャリアを積むにつれて、顧客との折衝やプリセールスの支援、チームマネジメント、管理業務などに追われるようになり、新技術を勉強するために割く時間がなくなっていきます。そのうえ、若い頃の吸収力も失われるため、ますます新技術のキャッチアップが困難になっていきます。
こうして40代半ば頃になると、マネジメント系の仕事はできるようになっても、最新技術に関しては心許ないというITエンジニアが大勢を占めるようになります。そうなると、顧客と折衝するのが仕事の営業部門やユーザーと直接話をすることが多いシステム運用部門に配置転換される人が出てくることになります。
■しかし「異動」は解決策になるどころか…
彼らはもともと、最新技術に日々接しながら、新しいシステムを開発したくてIT企業に入ったので、営業や運用の仕事に替わること自体、仕方ないと思いつつも、心の底から受け入れることができません。そうなると「仕事に意味や意義を見出す」感覚(=有意味感。前向き度を構成する三要素の一つ)が失われがちです。
あるいは慣れない仕事で、やり方が分からず(結果予期〔=自己信頼度を構成する一要素〕が落ちる)、遂行できるという自信もあまりもてません(効力予期〔=自己信頼度を構成するもう一つの要素〕が落ちる)。すなわち自己信頼度が下がります。さらに営業に異動した人なら売上が上がらない、運用に異動した人なら自分が作ったわけでもないシステムのトラブル対応に追われることになります。
こういったことが続くと「自分はやれる」という感覚(=処理可能感。前向き度を構成する三要素の二つ目)が徐々に失われていきます。そのうち、いつまでこんな仕事を続けなければならないのかといった「先を見通す」感覚(=把握可能感。前向き度を構成する三要素の三つ目)にまで影響します。
こうしてストレス対処能力が徐々に広範囲に落ち込んでしまい、そもそも営業も運用もストレスが強く自分には向いていない仕事だということで、結果的にローパフォーマー化してしまうことになります。しかしながら、もともと経験値の高い年代であり生活も守らなければなりませんので、20代のようにストレスが直ちにメンタル不調に影響したり、有「仕事に意味や意義を見出す」感覚の落ち込みが離職圧力を高めたりするわけではありませんが、パフォーマンス(業務遂行能力)が著しく下がってしまいます。
ここまではIT業界の話でしたが、一般企業でもデジタル化、テック化が急速に進んできています。最新のデジタル技術にキャッチアップできていない中高年の技術職や研究職で同様の問題が発生しています。