行方不明の相続人がいる場合の相続手続き
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるので、相続人の中に音信不通などで連絡がとれない人がいると手続きを進めることができません。
連絡の取れない相続人を除いての遺産分割協議は法律的に認められません。相続人が全員参加しない遺産分割協議は無効になります。こういった場合は、相手の戸籍を手に入れて現住所を確認する必要があります。戸籍の附票には現住所が記載されているため、この住所を手がかりに手紙や訪問などで連絡をとります。
しかし、附票に記載した現住所に本当に住んでいるとは限りません。この場合、連絡をとる手立てを探すことが難しくなります。
とはいえ、相続税の申告期限は相続の開始の翌日から10ヶ月以内なので、手続きを進めるために「不在者財産管理人」を立てて遺産分割協議を行います。不在者財産管理人は家庭裁判所の許可を得て遺産分割協議に加わり、「不在者が現れるまで」「失踪宣告されるまで」「死亡が確認されるまで」財産を管理します。
行方不明者が災害などで生存の可能性が低い場合、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てます。また、行方不明になって7年間生死が明らかでない場合にも失踪宣告が認められます。
失踪宣告は法律上、死亡と推定されるため、相続権はその人の子どもなどに移ります。もし失踪宣告された人があとになって現れた場合には失踪を取り消す手続きが必要ですが、遺産分割は取り消されません。ただし、遺産が残っていれば現れた人に財産を返還しなければならないので注意しましょう。
なお、相続人の中に行方不明者がいる場合にも、被相続人が遺言書を残していれば遺言書通りに遺産分割が行われるので、相続人の同意は要りません。
遺産分割協議中に相続人が死亡した場合
家族が相次いで亡くなることは珍しいことではありません。高齢の夫婦が増えている現状から、このようなケースは今後増えていくと考えられます。
たとえば、父親が亡くなった1回目の相続を一次相続、母親が亡くなった2回目の相続のことを二次相続とするように、一次相続で遺産分割協議が終わらないまま死亡し、二次相続が発生することを「再転相続」といいます。
再転相続は相続が相次いで発生するため、遺産の状況を把握するのが難しくなることがあります。
たとえば、相続人に借金があったため相続放棄をしたい場合は3か月以内が期限ですが、一次相続の発生から約2ヶ月後に二次相続が発生した場合、一次相続の相続放棄をする期限は1ヶ月しかないことになってしまいます。
そのため、再転相続の場合、相続放棄の手続き期限は「第2期限と同じ日」とされています。遺産分割協議書は原則として第1相続と第2相続でそれぞれ作成します。ただし、第2相続で亡くなった人を除いて第1相続と第2相続の相続人が同じ場合は遺産分割協議書をまとめて1通にすることも可能です。
全員で遺産分割協議ができない場合の手続きまとめ
- 遠方に住んでいる人(海外在住者など)や体調不良などで外出が難しい人がいる場合は電話や書面などで協議を行い、協議の内容に全員が同意できるようにする
- 行方不明者がいる場合は相手の戸籍から現住所を確認、それでも連絡がとれなければ「不在者財産管理人」を立てて遺産分割協議をすすめる
- 遺産分割協議中に相続人が死亡して再転相続が起こった場合は、相続放棄の手続き期限が第2期限と同じ日とされる
大槻 卓也
行政書士法人ストレート 代表行政書士
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