(画像はイメージです/PIXTA)

本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社の「グロース株か?バリュー株か?アクティブ・マネージャーの見解」最新レポートを一部抜粋したものです。

イノベーションによるデフレ要因…1.Eコマース

Eコマースは、小売りに影響を及ぼす多くのイノベーションのケーススタディーの一つでが、Eコマースはデフレ要因になるだけでなく、消費者物価指数(CPI)において、実際のインフレ率が過大評価される要因になっているとの見方もあります。

 

消費者物価指数(CPI)は、インフレ率を正確に反映できていない

 

ネット販売が十分にカバーされていないCPIは、インフレ率を正確に反映していない可能性があります。エコノミストはすべてのネット価格を抽出することはできず、ネットで販売される品目の多くはCPIの算出に含まれていません。

 

オースタン・グールズビー氏とピーター・クレノウ氏が2014年から2017年にかけて実施した調査によると、「例えば、パソコンのネット価格は12.3%下落しているが、CPIでは6.9%の下落にとどまっている。玩具のネット価格も12%下落しているのに対し、CPIでは7.8%の下落にとどまっている。写真機器・サプライ用品のネット価格は9.2%下落しているが、CPIでは0.6%しか下落していない」※4

 

アドビでは膨大な量のネット取引を分析したところ、製品・サービスのネット価格は2014年以降23%下落していますが、CPIでは12%下落にとどまっていることが明らかになっています※5

 

「ネット購入の方が安い」のワケ

 

消費者からすればネットで購入したほうが安いと感じていますが、それには構造的な理由があります。Eコマースは比較が行いやすく、ネット販売業者は値上げしづらくなります。

 

Eコマースは通常、実店舗よりコストが低く抑えられ、従来の小売業者より価格を引き下げることが可能です。また、消費者はどこからでも購入が可能で、地元よりもコスト構造が低い地域から購入することができます。

 

アマゾンは当初、実店舗のコストを回避し、値下げにより競争に挑みました。アマゾンの成長は、それだけでもデフレ圧力という影響を与えます。アマゾンの規模が拡大するにつれ、価格交渉力も巨大なものとなり、自社のECサイトで他の大半の小売業者より低価格で商品を販売することが可能になりました。

 

物流センターの運営や航空機のリースも開始し、自社のサプライチェーンの余分なコストを削減しました。労働力をロボットや物流アルゴリズム、場合によってはドローン配達などに置き換えることにより、配達コストや結果として商品の販売コストをさらに引き下げることが可能になります。

 

コロナ後もECによるデフレ効果は強まる

 

コロナ後の消費行動の変化は今後も続き、Eコマースのデフレ効果は強まると予想しています。最近のマッキンゼーの調査によると、今回のパンデミックで、消費者の40%が新しい買い物を試みたと報告されています。同じ調査で、消費者の80%が、今後も買い物の習慣を恒久的に変えると回答しています※6

 

今回のパンデミックをきっかけに、Eコマースの波はあらゆる小売店に広がりました。季節調整後の小売売上高全体に占めるEコマースの割合は、経済活動の再開にもかかわらず、コロナ前の11%から14%に増加しています※7

 

同様に、Eコマースとは縁が薄かった自動車販売などの分野でも、ネット販売へのシフトは進んでいます。Eコマースは従来型の小売業からシェアを奪っており、販売価格には長期的に下落圧力がかかると予想されます。

 

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