(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年11月の米国大統領選挙に向けて、各候補者の主要な経済政策、次期大統領が2025年に直面する可能性のあるその他の主要な課題、そして投資家に与える幅広い影響について、フランクリン・テンプルトン・インスティテュートの見解をご紹介します。

※本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が2024年9月13日に配信したレポートを転載したものです。

〈〈元のレポートはコチラ〉〉

ポイント

・米国大統領選挙は、経済および投資ポートフォリオ全体にとって重大な影響を及ぼすと見なされることが多々あります。しかし歴史的に見ると、共和党または民主党政権が市場全体のパフォーマンスに影響を与えたことを示すエビデンスは見当たりませんでした。


・米国の政党間で異なるのは、特にエネルギーや製薬業界に影響を与える政策であり、この点はよく注視する必要があります。


・米国の選挙結果は、大統領だけでなく、上院および下院でどちらの党が多数派となるかも依然不透明であるため、投資家がポートフォリオを大幅に調整するのは時期尚早です。

選挙が投資家に与える影響

8月12日の週に、トランプ前大統領とハリス副大統領の両候補は自らの経済政策と優先課題を示す演説を行い、8月19日の週には民主党全国大会がシカゴで開催されました。しかし、ここで語られなかったことが、語られたことと同じくらい重要である可能性があります。

 

本稿では、各候補者の主要な経済政策、次期大統領が2025年に直面する可能性のあるその他の主要な課題、そして投資家に与える幅広い影響についてまとめています。

ハリス候補の経済政策

民主党全国大会が開催された週、ハリス氏のキャンペーンにメディアの注目が集まり、世論調査では、初夏にトランプ氏がリードしていた差をハリス氏が縮めていることが示されました。まずは、ハリス氏の経済政策について考察します。

 

最初に注目すべきは、ハリス氏は熟練の弁護士であり、元検察官、元上院議員、そして現職の米国副大統領であるということです。ハリス氏は、いずれの役職においても、経済に関する明確な実績や自身の見解を打ち出してきたわけではありません。そのため、ハリス候補が経済情勢やその課題をどう捉え、どのような政策で解決しようとしているのか、投資家はもちろん有権者は今まさに注目しているところです。これらのプロセスは、選挙に向けて進展し、彼女が大統領に当選した場合、移行期間から任期にかけて変化していく可能性があります。

 

したがって、「ハリス・エコノミクス」が第一に示唆するものは、投資家がハリス氏の優先事項を見極め、それが自身のポートフォリオにどのような影響を与えるかを理解するには時間がかかるということです。

 

とはいえ、党大会やその前週行った演説では、ハリス氏は彼女の対抗者と共通する戦術を採用しました。これは現在の多くの政治家が使う戦術でもあり、広範な経済イデオロギーを避け、特定の問題を解決するための実務的な提案に重きを置くというものです。

 

例えば、食料品価格の高騰に対しては「便乗値上げ」の取り締まりによって対処するとしています。住宅価格の高騰や、低所得者層や若い世代の家庭が手狭だが安価な住まいから、広く快適な住宅に段階的に住み替える「住宅すごろく」が不可能になっている問題については、対象者に頭金として最大2万5,000ドルの政府補助金を支給し、住宅建設の奨励策も講じるとしています。また、子育てコストの上昇に対処するため、子供が生まれた最初の年に6,000ドルの子ども税額控除を提案しています。また、ハリス氏はトランプ氏が公約したチップに課す連邦税の廃止にも賛同しています。

 

これらの提案はいずれも特定の有権者層をターゲットとしたものであり、純粋な経済哲学というよりも政治的な策略と見なされるかもしれません。しかし、候補者とその政策、所属政党がイデオロギー的な経済路線に沿って激しく対立していた時代は終わったことは注目に値します。両候補者も主要政党も、かつてとった政策を支持していません。例えば、かつて共和党は「自由市場」と「自由貿易」を支持すると期待されていたのに対し、民主党は「ケインズ主義者」とレッテルを貼られていました。これに代わり、昨今の経済政策は有権者層を狙った「取引のようなもの」であり、かつての大言壮語は影を潜めています。これまでのところ、カマラ・ハリス氏も同様です。

トランプ候補の経済政策

ハリス氏とは対照的に、トランプ氏は経済政策の実績があり、過去に数多くの演説や発言を行っているため、彼の政策はより広く知られており、ホワイトハウスに復帰した場合の計画もよく理解されています。また、トランプ氏が大統領に再選された場合、共和党が上院とおそらく下院も制する可能性が高く、トランプ氏は政策を実施する上でより大きな権限を持つことになる可能性が高くなります。

 

トランプ氏の1期目の看板政策は、「減税」(主に法人税減税)、化石燃料産業を中心とした「規制緩和」、そして「関税」でした。2024年の選挙キャンペーンでのこれまでの発言からは、これらの中核政策が2期目に実施されないと示唆するものは何もありません。

 

しかし、トランプ氏は、社会保障税の廃止や新たな関税の導入、不法移民の強制送還の拡大など、他の経済政策を検討する姿勢を示しています。また、不法移民の強制送還の強化とともに新たな一律関税を提案しています。トランプ氏の政策はコストを押し上げ、インフレを加速させる可能性がありますが、国内の生産、経済成長、賃金を押し上げる可能性もあります。

 

トランプ氏は自由貿易の推進など、共和党の伝統的な信条と決別して久しく、この点において、ハリス氏と同様、特定の政治目標や経済的成果を達成するための経済政策を展開しています。

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