今後、個人の力だけで課題解決することは不可能
チームパフォーマンスをマネジメントしないといけない理由は、個人のパフォーマンスの総和がチームパフォーマンスにはならないからだけではありません。
多様化が進む現代において、今やリーダーだけが課題の解決策を考えてメンバーに指示を出すことは難しくなりました。また、能力の高いメンバーがいたとしてもたった一人では現状を変えるのは困難です。複数の知恵や知見を結集し合ってはじめて画期的なプロダクトが生まれます。それらをまとめる力がチームマネジメントなのです。
開発だけではありません。営業もこの10年ほどで大きく様変わりしました。以前は法人営業であれば見込み客を発掘し、商談に結びつけ、契約にこぎつけ、アフターフォローしてリピート案件を獲得するといった一連のプロセスを一人の営業パーソンが担当している会社が少なくありませんでした。
ところが今では、見込み客の発掘は主にマーケティング部門の仕事ですし、アフターフォローしてリピートに結びつけるのはカスタマーサクセスと呼ばれる部門です。セールス担当も、商談に結びつけるまでを担当するインサイドセールスと、対面で商談を進めるフィールドセールスに分かれつつあり、分業が進んでいます。
この背景にはテクノロジーの進歩があります。Web化の進展で、さまざまなデータが大量に入手できるようになりました。ある顧客のこれまでのアクション(資料請求やセミナー参加など)をすべて管理することができますし、それを担当者単位で知ることができます。そうなるとITを活用したきめ細かい顧客対応ができるほうが有利ということで、そのためのツールも発達してきました。
それぞれの顧客にきめ細かい対応をすることは一人の営業パーソンでは困難です。またマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといったそれぞれのプロセスで使用するITツールも別々であり、それらすべてを使いこなすのも難しいことです。こうして分業が細かくかつ高度になっており、顧客対応も複数の担当者で実施することが普通になっています。
こうしたことは大企業だけと思われるかもしれませんが、多くの中小企業でも事情は同じです。Webマーケティングが盛んになっている今、中小企業にもWeb担当者がいて、メルマガやブログを活用した集客を行うことが普通になりました。小さな会社であれば、会社全体で一人の営業パーソンをフォローして商談を進めることもよくあります。それがツールの進歩でできるようになったわけです。
個人のパフォーマンスの影響が大きいベンチャー企業でさえ、最近は大企業と積極的にパートナーシップを組み、例えばマーケティングについては大企業の力を借りるといった事例が増えています。部門どころか会社を超えたチームで仕事をすることがもはや当たり前なのです。
リーダーもメンバーも一人の力ではやれることは多くありません。個々がバラバラに仕事に取り組んでいる企業は時代に取り残される可能性が高くなります。個人のパフォーマンスだけではなく、チームパフォーマンスを高めるマネジメントがあらゆるリーダーに求められています。