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「理屈で選ばれる定番」と「感性で選ばれる定番」
■理屈ではなく、感性で選ばれるブランドをめざせ
頂点にいる怪物企業のビジネスは、顧客からの「依存」をベースに成功をめざしている。つまり、顧客が基本的なニーズの大部分を頼ってくれるような生活システムを築くということだ。実際、すでにそれは現実のものとなっている。
要するに、地球上の残る99%の小売業者にとって、唯一救いの道があるとすれば、顧客からの深い「忠誠」を獲得することに他ならない。顧客から「理屈で選ばれる定番」が怪物企業だとすれば、こちらは「感性で選ばれる定番」になるべきだ。あちらが小売りのサイエンス(理論)に長けているなら、こちらは小売りのアート(わざ)を突き詰めようではないか。
何よりも大切なことは、カテゴリーの垣根を越えた市場の広大な中心部が怪物企業に奪われてしまった以上、あらゆるブランドは、取扱商品に関係なく、市場のポジショニングを再考し、立て直しを図らなければならない。一点の曇りもない魅力ある価値を顧客に訴求できない企業は、ただ退場するのみである。
ただし、ここで言うポジショニングとは、従来の意味とは違う。従来型のポジショニングモデルの多くは、ブランド各社もすでに利用している。だが、どうだろう。パンデミック後の世界では、ごくわずかなグローバルブランドだけが世界の消費者の暮らしの中心に居座って、圧倒的な存在感を示すようになるわけだが、残念ながら、従来のポジショニングモデルのほとんどは、こうした極端な市場力学を説明できない。
ほとんどのモデルで想定されている市場では、競合する企業間の微妙な違いが長期にわたる優位性を生み出すという前提に立っているからだ。私に言わせれば、そのような時代は過去の話である。今こそ、新しい枠組みが求められる。ただ、一部のブランドにとっては気が重くなるような内容かもしれない。というのも、この新たな枠組みは、生存能力を判定する試金石として、まったく容赦のない厳格なものになるからだ。
■「なぜ自社が必要とされるのか」を徹底的に考えよ
ここで問いたいのだが、あなたの会社の目的は何か。目的と言っても、会社の経営理念とかビジョンとか価値観などとは違う。そもそも会社が存在する理由である。
平たく言えば、「なぜ、あなたのブランドが必要とされるのか」だ。顧客の暮らしにどのような明確な価値を与えるのか。どのような目的に応えるブランドなのか。あなたのブランドに何らかの目的と価値があったとしよう。
だが、はたして消費者の暮らしのなかで「感性で選ばれる定番」となるのにふさわしい目的と言えるかどうかは、別の問題だ。さて、答えはどこにあるのか。一番いいのは、次の問いかけに、ブランドとしてどう応えられるのかを考えることだ。