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消費者が選び「ブランド」が存在する根拠
■あなたのブランドが答えだとしたら、元の問いかけは何か
ブランドとは、本質的には顧客が何かを手っ取り早く表現する手段である。膨大な数の選択肢があふれる海で迷わないように誘導する手段であり、顧客が選択範囲を絞り込めるように支援するものだ。その際、顧客から頻繁に寄せられるような問いかけには、スパッと明確な答えを出せることが望ましい。
50年前、中流意識を持ち、品揃えと価値を求めていた人々に対して、1つの答えとなったのが、シアーズ百貨店だった。では、現在、シアーズというブランドは、顧客のどのような問いかけに答えを出そうとしているのか。そして、その顧客とは誰か。消費者がタブレットを放り出し、アマゾンに目もくれず、シアーズの店舗やウェブサイトに直行する。そんな状況を作り出すには、どのような力が必要なのか。
シアーズは、あくまでも例に過ぎない。大多数のブランドに当てはまる話である。ほとんどのブランドが売っている商品は、他でも買えるようなものばかりで、ひどいときには店の対応も横並び、魅力的な個性の1つも感じられない。シアーズに限らず、小売業者の大多数は、顧客の問いかけにまったく答えを出せていないのだ。となれば、ブランドは埋もれ、消費者の視界から消えていく。
顧客が迷うことなく「それなら、あのブランド(または店)だよ」と明快にあなたのブランド名を挙げてくれるのは、いったい顧客のどのような問いかけなのか。パンデミック後の時代に生き残りをかけるブランドにとって最初の難関は、何を問えば、そのように答えてくれるのか見極めることなのだ。この問いかけが見えてこなければ、あなたのブランドが存在する根拠もないことになる。
これはあらゆる質問のなかでも基本中の基本。これが明らかにならない限り、顧客のセグメント化やら市場分析やらをいくらがんばったところで何の役にも立たない。
パンデミック後の世界で、「手ごろな価格で素早く何でも手に入るのはどこ?」という消費者の問いかけに対する答えは、アマゾンやアリババ、京東、ウォルマートだ。しかも、今後はただの答えではなく大正解になっていく。そうなると、曖昧でつかみどころのない価値しか提示できないブランドには、ほとんど居場所がなくなる。
改めてみなさんに問いたい。あなたのブランドが答えだと言うなら、顧客のどのような問いかけに対する答えなのか。
ダグ・スティーブンス
小売コンサルタント