アベノミクスや東京オリンピックの開催決定などを背景に価格上昇を続けてきた東京不動産。特に、都心エリアの住宅、マンション価格はバブルの域に達しているのではないかと警戒している人も少なくありません。しかし、住宅ジャーナリストの榊淳司氏は、港区や千代田区など人気エリアの不動産価値について強気の見解を示しています。その理由をみていきましょう。

「ハワイに住んで月1回だけ東京」という生活も可能?

ボヘミアンでもワーカホリックでもない人は、住居費の高い東京都心に住みたいとは思わない。自分のライフスタイルに合わせて、ある程度は東京との距離を取るのではないか。

 

極端なことを言うと、ハワイに住んで月に1回だけ東京にやって来る、というビジネスマンも、2050年には一定数はいそうである。

 

逆にそういう必要性は薄いが、大手町の本社に1時間以内に駆けつけられるようなところに住まないと心が落ち着かない、というタイプもいるだろう。あるいは、子どもを良い学校に通わせるために、あえて都心に近い場所に住居を定める人もいるだろう。

 

ただし、2050年の日本の教育スタイルが、今と同じかどうかはわからない。教育もリモート主体になって、名門校の心理的ステイタスが相対的に低下しているようなことは十分に想定できる。学歴ではなく、学力が重視される社会の到来だ。

 

そういう場合は、今のように学校のネームバリューを重視するのではなく、国際統一テストのような世界的にスタンダードなスコアを重視することになる。いい学校に通わせるよりも、高い学力や知性・教養を身に着けることをめざすので、必ずしも東京の便利な場所に住む必要はなくなる。

 

様々なことを考え合わせると、2050年の東京における不動産への需要は、その総量において2020年よりも減少していることは確実だろう。そもそも、このままだと東京の人口が100万人ほど減ってしまうのだ。それだけでも不動産需要の減少要因となる。すなわち、価格の下落要因だ。

 

したがって港区や千代田区、新宿区、渋谷区などの人気エリアを除けば、住宅の価格が今よりも安くなっていることは想像に難くない。

 

そもそも、2020年時点の東京都心エリアの住宅、特にマンション価格は高すぎる。この現象を私はかねがね「局地バブル」と呼び、近い将来の価格下落を予見してきた。

 

 

榊 淳司
住宅ジャーナリスト
 

 

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※本連載は、榊 淳司氏の著書『ようこそ、2050年の東京へ』から一部を抜粋・再編集したものです。

ようこそ、2050年の東京へ

ようこそ、2050年の東京へ

榊 淳司

イースト・プレス

東京にとって1960年から90年は、「高度経済成長」による拡大・発展の30年間だった。それから現在までは「失われた20年」を経て、停滞する30年間を過ごした。では、成長を期待できない日本において、首都・東京が歩むこれからの…

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