通勤から解放された日本人…住む場所として「選ぶ街」と「捨てる街」

コロナ禍でリモートワークが普及し、一部ではオフィス不要論もささやかれています。そのようななか、今後は東京に住んでいる人たちの「住む場所」の選び方が変わってくると、住宅ジャーナリストの榊淳司氏はいいます。リモートワークが当たり前になるかもしれない将来の日本……毎日の通勤から解放された人々が居住地として「選ぶ街」と「捨てる街」をみていきます。

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テレワークによって「オフィスの必要性」が希薄化

2020年に世界的な流行となった新型コロナウイルスは、世界中の社会や経済に大きな変化をもたらした。もちろん日本の首都である東京の街も今後、新型コロナによって大きな影響を受けるはずだ。

 

ビジネスの世界での最も大きな変化は、テレワークの普及だろう。密閉、密接、密集という三密を避けるために、多くの企業ではテレワークが採用された。それによって、企業も従業員も気づいてしまった。

 

――オフィスは要らない。

 

少なくともコロナ前のように、1人1台のデスクを設置するほどの面積は不要であることが証明されてしまった。企業は当然、オフィスの縮小に動く。

 

何よりもテレワークによって、オフィス賃料というわかりやすいコストが削減できるのだから、それが強力なモチベーションとなる。だからこの動きは、大きな流れとなって当面の間は続きそうだ。

 

もうひとつの動きも生み出しそうだ。それはビジネスを行うにあたって、必ずしも東京という街の機能自体が必要でなくなってしまうことである。

 

これまでのビジネスシーンでは、人と会うことが重要であった。それ自体は今後も重要であろうが、ただ打ち合わせしたり会議を行ったりするために、必ずしも全員が同じ場所にいなくてもよいことがわかってしまった。テレワークで十分だったのである。

 

もちろん直接会うことによって得られるものは多いが、それによって失うものもある。

 

失われる最大のものは時間である。会う場所まで移動する時間。この損失は意外と大きい。今まで多くの人はこの時間の損失について、あまりにも鈍感だった。

 

さらに、移動に要する費用。鉄道やタクシーを利用するコストはバカにならない。

 

面積と時間と移動のコストを大幅に節減できるのが、テレワークなのである。合理的な発想に立てば、テレワークの普及は必然の選択となるはずだ。

 

一方で、テレワーク導入に対する抵抗が強いのも事実。ただそれも、年月とともに弱まるだろう。情報機器の操作に慣れない昭和期の就職組が、定年退職などで徐々にビジネスの現場から退場していくからである。

 

さらに、人材確保というベクトルもある。同じ業種の中で「A社はテレワークが基本、B社は出社スタイルが基本」となった場合、就活生が選ぶのはどちらだろうか。考えるまでもなくA社である。

 

コロナ前、渋谷エリアはオフィスの賃料が高騰していた。坪単価5万円の賃料予算でも、良い場所でオフィスを借りるのが難しかった。高収益体質のIT系企業が、人材獲得で有利になる渋谷の先進オフィスを高値でも借りたがったからである。

 

しかし、それはすでに過去の話になった。渋谷のおしゃれなオフィスに毎日通うよりも、自宅や近所のカフェで仕事ができることのほうが、若い社員にとってはよほど魅力的だ。これは渋谷に限ったことではない。丸の内や大手町、銀座や新宿、六本木でも同じ現象が起きるだろう。

 

コロナ後は、東京という街はビジネスの舞台としての役割を低下させるのである。

 

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住宅ジャーナリスト

1962年、京都府生まれ。同志社大学法学部および慶應義塾大学文学部卒。1980年代後半から30年以上、マンションの広告・販売戦略立案に携わる。その経験を生かし、購入者側の視点に立ちながら、日々取材を重ねている。著書に『マンションは日本人を幸せにするか』(集英社新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)、『すべのマンションは廃墟になる』(イースト新書)などがある。

著者紹介

連載人気住宅ジャーナリストが分析!土地・不動産価値の観点からみる「未来の東京」

※本連載は、榊 淳司氏の著書『ようこそ、2050年の東京へ』から一部を抜粋・再編集したものです。

ようこそ、2050年の東京へ

ようこそ、2050年の東京へ

榊 淳司

イースト・プレス

東京にとって1960年から90年は、「高度経済成長」による拡大・発展の30年間だった。それから現在までは「失われた20年」を経て、停滞する30年間を過ごした。では、成長を期待できない日本において、首都・東京が歩むこれからの…

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