(※写真はイメージです/PIXTA)

寝たきりを防ぐには、リハビリによって身体機能を維持することが重要です。身体機能というと、筋肉の力や持久力、聴力など様々なものがありますが、意外と盲点になりがちなのが、噛んだり、飲み込んだり、ものを食べる機能。口の健康を維持することができれば、全身の健康維持にも繋がります。リハビリ専門デイサービス「リタポンテ」を運営する筆者らが解説します。

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自覚しにくい、「飲んだり食べたりする機能」の低下

歩行機能も大切ですが、噛んだり、飲み込んだり、ものを食べる機能も、非常に大切です。これらの機能も、ほかと同じく年齢とともに弱っていきますが、弱ったことになかなか気づきにくいのが特徴です。

 

突然ですが、30秒間でツバを3回飲み込んでみてください。もし、できなかったら、嚥下機能(物を飲み込む機能)が衰えている可能性が高いです。

 

なぜ大切なのか。それは、人間の身体は、食べ物から栄養素をもらってできているからです。

 

噛んだり飲んだりする機能が落ちることで、食べ物がうまく消化されず、栄養があまり吸収されなくなることもありますし、食べるのがつらくなるために量が減り、栄養が不十分になり健康を害している高齢者もたくさんいます。

 

厚生労働省が2019年に行った「国民健康・栄養調査」によると、65歳以上の低栄養傾向(BMI20以下)の割合は、16.8%(男性12.9%、女性20.7%)。さらに、85歳以上の女性は約3割が低栄養傾向にあるとあります。

 

この飽食の日本において、飢餓状態の人がこれだけいるのです。だからこそ、私どもの施設には、STという口腔機能のリハビリテーションの専門職がいて、必要な方には、嚥下機能を低下させないリハビリも行うようにしています。

実際、「窒息事故で搬送された人」の約9割が高齢者

高齢者が食べたり飲んだりする機能が弱まることを如実に表しているのが、毎年、お正月のころの、もちをのどに詰まらせて救急搬送される事故のニュースです。

 

東京消防庁の発表によると、2021(令和3)年の元日夕方までに、もちをのどに詰まらせて救急搬送された人は5人。そのうちの1人が死亡し、ほかの4人も心肺停止などの重体です。

 

団子なども含むもちによる窒息事故は、1月と12月に集中しています。東京消防庁の調査では、2015年から2019年までの5年間に東京都内で団子などを含むもちによる窒息事故で救急搬送された人は、1月が最多で177人、12月が63人でそれに次ぎ、2月の41人、11月の33人と続きます。

 

実は、こうしたもちによる窒息事故の被害者の多くが高齢者です。

 

東京消防庁のデータによれば、2015年から2019年までの5年間にもちが原因の窒息事故で救急搬送された463人のうち、65歳以上の高齢者は412人。なんと、全体の9割近くを占めています。

 

なぜ、高齢者は、それ以外の年齢層の人に比べて、これほどもちをのどに詰まらせやすいのでしょうか?

 

最大の原因は、飲食物を飲み込むための嚥下機能が高齢になると低下するからです。

 

人間はものを飲み込む直前に息を止め、その直後に息を吐くことで、気道をふさいで、食道に食べ物を通します。この動作がスムーズに行われなくなると、食べ物が誤って気道に入る誤嚥を起こします。

 

健康な人でも、50代になると飲み物や唾液が食道のほうに流れず、思わずむせてしまったという経験がある人も少なくないでしょう。そんなときには、誤嚥を起こしかけているのです。

 

人は年齢を重ねるにつれ、口やのどの周辺の筋肉、神経が衰えていきます。その結果、嚥下機能が低下して、誤嚥を起こしやすくなるのです。液体ならまだしも、もちのような粘り気の強い固体を誤嚥すれば、ただでは済みません。

 

こうして、本来ならおめでたいはずの新年早々に、高齢者がもちをのどに詰まらせて救急搬送されるという悲劇が繰り返されるのです。

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道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる

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神戸 利文
上村 理絵

アスコム

青信号で道を渡り切れず、怖くて買い物にも行けない。 トイレに間に合わず、オムツを重ね履きしている。 長期間の寝たきり生活を送り、家族に迷惑をかけているのが申し訳ない…。 間違った介護と医療で、急激に身体が弱っ…

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