(※写真はイメージです/PIXTA)

内閣府「令和3年版高齢社会白書」によると、男性の平均寿命が80.98歳であるのに対し、健康寿命は72.14歳。女性の平均寿命が87.14歳であるのに対し、健康寿命は74.79歳(いずれのデータも2016年時点)。2010年頃に比べて健康寿命は延伸したといわれていますが、最期の数年間は健康上に何かしらの問題を抱え、日常生活に支障をきたしながら過ごしているという事実は変わりません。なぜ、寝たきりが減らないのでしょうか。原因の1つとして、実は日本の介護の状況が大きく関係しています。

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施設入居を待つ「待機老人」の数は、待機児童の約20倍

入所を申し込んでいるものの、在宅での生活が困難になった「要介護3」以上の高齢者が入居できる公的な「介護保険施設」である特別養護老人ホーム(特養)に入所することができていない、いわば「待機老人」がどれぐらいの数にのぼるか、知っていますか?

 

5年ほど前に世間を賑わせた「待機児童」の数は、その2016年当時、日本全国で2万3553人。2019年4月の時点では、1万6772人にまで減っています。

 

一方、待機老人は、2019年時点で、日本全国で約32万6000人。なんと、待機児童の19.4倍、約20倍もいるのです。

 

しかし、待機児童の問題はメディアでも国会でも取り上げられるなどして、ある程度は解消に向かいつつあるのに、待機老人に関しては、あまり聞くことがありません。

 

特養に入ることがベストな選択というわけでは決してないですし、資産的に余裕がある方は、民間の有料老人ホームに行くという手もあるでしょう。

 

ただし、介護についての国や地方自治体の体制が決して潤沢に整っているわけではないことをよく表している事実ではないかと思います。

200万人以上もの「リハビリ難民」が行きつく先

待機老人よりも、実は深刻な現状があります。それが「リハビリ難民」です。

 

高齢者の身体機能を維持するためにリハビリ、機能訓練が欠かせないのですが、そのリハビリをする施設がないのです。

 

たとえば我々の施設がある新宿区は、世界でも有数の病床数を誇りますが、病院の施設以外で、リハビリができ、なおかつ、リハビリの専門職である理学療法士がきちんといる施設というのは、数えるほどしかありません。

 

そして、リハビリを受けなくてはならないのに、リハビリを受けられない人は、全国で200万人以上いるという報道もあります。

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※本連載は、神戸利文氏、上村理絵氏による共著『道路を渡れない老人たち』(アスコム)より一部を抜粋・再編集したものです。

道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる

道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる

神戸 利文
上村 理絵

アスコム

青信号で道を渡り切れず、怖くて買い物にも行けない。 トイレに間に合わず、オムツを重ね履きしている。 長期間の寝たきり生活を送り、家族に迷惑をかけているのが申し訳ない…。 間違った介護と医療で、急激に身体が弱っ…

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