(※写真はイメージです/PIXTA)

契約時に「通常使用により生じた損耗や経年劣化についても原状回復義務を負う」と定めていた場合、この特約は有効なのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際の裁判例をもとに解説します。※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

裁判所は「消費者契約法10条に違反」と判断

この点について判断したのが、大阪高等裁判所平成16年12月17日判決です。

 

この事例は、通常損耗についての原状回復義務を借主に負担させるとした特約が消費者契約法10条に違反し無効と判断したものです。

 

この事例では、賃貸借契約の締結時に原状回復に関する文書を借主に交付し、その文書では「原状回復すべき内容を冷暖房、乾燥機、給油機等の点検、畳表替え、ふすま張り替えなどと具体的に掲げ、賃貸人が原状回復した場合の賃借人の費用負担額の基礎となる費用単価を明示」していました。

 

しかし、裁判所は、この点について

 

「自然損耗等についての原状回復の内容をどのように想定し、費用をどのように見積もったのか等については、賃借人に適切な情報が提供されたとはいえない。」

 

「本件原状回復特約による自然損耗等についての原状回復義務を負担することと賃料に原状回復費用を含まないこととの有利、不利を判断し得る情報を欠き、適否を決することができない。

 

このような状況でされた本件原状回復特約による自然損耗等についての原状回復義務負担の合意は、賃借人に必要な情報が与えられず、自己に不利益であることが認識できないままされたものであって、賃借人に一方的に不利益であり、信義則にも反する。」

 

と判断して、無効と解釈しました。

 

以上のように、通常損耗についても借主に負担させる特約を定める場合には、借主が負うべき原状回復の範囲を契約で明確に特定するだけではなく、借主がこれを負担する合理的な根拠(通常損耗を借主が負担することを前提として賃料を設定した等)を貸主から借主に説明し、通常損耗部分の原状回復費用の概算も明示するなどして、情報提供も十分に行うことが必要です。

 

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