(※写真はイメージです/PIXTA)

相続が起こってから半年ほどたつと、税務署から「相続税のお尋ね」が送られてくることがあります。突然届き、「基準は何なのか?」「無視したらどうなるの?」と疑問に思う方も多いようです。きちんと対応しなければ“重加算税”がかかることもある「お尋ね」について、辻・本郷税理士法人の山口拓也氏が、事例とともに解説していきます。

お尋ねに「相続税を過少に記載したが…」意外な事例

2つ目は相続税を過少に記載した「お尋ね」の回答書を提出して、重加算税が賦課されなかった事例です。

 

事案の概要は以下です。

 

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相続税の期限内申告をせずに「相続のお尋ね」に対して、相続財産を基礎控除以下であるお尋ね回答書を提出した。その後税務調査があり、相続財産が基礎控除を上回ることが判明したので、期限後申告書を提出した。その期限後申告書に対して重加算税が賦課されたが、国税不服審判所は「認識ある無申告」ということで重加算税を取り消した。

 

争点

 

●預貯金を請求人名義の預金に預け替え、有価証券を請求人名義に変更した上、

 

●これら預貯金や有価証券については、お尋ね書の用紙に記載したり、関係書類を提出したりすることもせず、

 

●あえてお尋ね書の用紙の預貯金欄に、一部の預貯金のみを記載し、被相続人から相続により取得した遺産の課税価格が遺産に係る基礎控除額以下である旨を記載し署名押印してこれをK税務署長に提出したことは、「隠ぺい、仮装と評価すべき」(架空名義の利用や資料の隠ぺい等の積極的な行為)に当たるかどうか

 

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判断のポイント

 

●一定の基準に基づき、相続税の申告が必要と見込まれるものに対して、相続税の申告についての案内文書と一緒に送付されるものである。

 

●上記申告の案内がなされたとしても、遺産の価格が法定相続人の数によって計算される基礎控除額の範囲内の場合等もある。

 

●お尋ね書を送付し、相続人に対し、他の相続人の存在や被相続人の財産・債務等の情報を照会するのである。

 

●本件お尋ね回答書の性質からすれば、請求人において、期限内申告書を提出しない場合に、申告を要しないものと考える旨記載された本件お尋ね回答書を提出したことは、いわば、相続税の申告をすべきことを知りながら、これをしなかったこと(認識ある無申告)と同等の行為と評価することができるので、無申告行為そのものとは別に、「隠ぺい、仮装と評価すべき行為」をしたものと認めることはできない。

 

●お尋ね書の回答書面は、課税庁が、当該相続が申告を要するものであるか否かの判断材料を得ることを主な目的として、納税者に対して任意に提出を求める書面であると解される。

 

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コメント

 

●相続手続きの名義変更等、形を変えている場合は、適当に相続税申告要否検討表を記入して投函すると税務調査で重加算税がかけられるケースが多い。

 

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どういう状況で重加算になるか、についてですが、無申告だけでは重加算の要件にはなりません。プラスアルファ、外部からうかがえる特段の行動をしているかどうか、つまり仮装、隠ぺい行為があるかどうかが問題となります。

 

金融機関で相続手続きをして、自分の口座に移すことはよくあります。これは単純に移すだけですから、仮装、隠ぺいではありません。

 

一方で、遠くの銀行に預けたり、そこから違うものに形を変えたりといった場合には仮装、隠ぺいに該当します。

 

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