(※写真はイメージです/PIXTA)

相続が起こってから半年ほどたつと、税務署から「相続税のお尋ね」が送られてくることがあります。突然届き、「基準は何なのか?」「無視したらどうなるの?」と疑問に思う方も多いようです。きちんと対応しなければ“重加算税”がかかることもある「お尋ね」について、辻・本郷税理士法人の山口拓也氏が、事例とともに解説していきます。

預金を記載しなかったのに「重加算税を免れた」ワケ

重加算税が賦課されたのち、税務署と争って賦課が取り消された事例が2つあるのでご紹介していきます。

 

1つ目は「相続についてのお尋ね」の文書に、相続財産である預金を記載せずに返送してしまった事例です。

 

事案の概要は以下です。

 

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●相続人は、被相続人の長男のみである。

 

●平成24年11月1日、弁護士2名が被相続人の成年後見人となった。

 

●被相続人は平成24年11月〇日に死亡した。

 

●相続開始日にN銀行口座、P銀行口座、Q銀行口座があり、このうちQ銀行口座は被相続人の年金の入金と公共料金引落口座として使用されていた。

 

●被相続人のN銀行口座の預金は一旦弁護士の口座に移されて、負債の返済がなされた後、長男名義のN銀行口座に入金された。

 

●税務署からの「お尋ね」に下記財産を記載して回答した。

 

①a市b町に所在する土地(持分16/20)

②a市b町に所在する建物(持分16/20)

③Q銀行口座、普通預金約3800万円(家族共有分)

 

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その後、税務署の調査があり、記載しなかった財産について「仮装、隠ぺい」に当たるかどうかが争点となりました。

 

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判断のポイント

 

●自らがすべて相続したことを前提に、これらの各口座の預金を相続手続きにより自己名義の預金口座に預け替えたりしたというだけでは仮装または隠ぺいに該当しない。

 

●P口座とN口座の相続手続きについて指摘されるとその存在を認めており、それらの口座の預金を隠す態度が一貫していたとはいえない。

 

●長男は、それらの口座が発見されることを防止したり、それらの預金が相続財産に含まれないように装ったりする等の措置を行っていない。

 

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上記ポイントより、仮装または隠ぺいの行為とはいえないと判断されました。

 

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コメント

 

●はっきりとは覚えていないが、P口座とN口座の相続手続きを行ったことは認めている。

 

●相続税調査には素直に応じている。

 

●相続関係資料はすべて積極的に見せている。

 

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