「胃ろうはしちゃいけないと思って…」娘が下した仰天の選択【在宅医が解説】

「胃ろうはしちゃいけないと思って…」娘が下した仰天の選択【在宅医が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

積極的治療をやめる、延命治療を選択しない。どちらも死を意味します。しかし、死を受け入れることで、自分らしく過ごせる貴重な時間を手にすることができると在宅医はアドバイスします。※本連載は中村明澄著『「在宅死」という選択』(大和書房)より一部を抜粋し、再編集した原稿です。

無理をした抗がん剤は命取りになることも

■「人生会議」を行う

 

こうした望まない延命治療を避けるために、ご自分の延命治療をどうしたいか、意識がはっきりしているうちに表明しておく「リビング・ウィル」があります。

 

人生の最終段階(終末期)を迎えたときの医療の選択について事前に意思表示しておく文書です。表明された意思がケアに携わるすべての関係者に伝わるため、最期まで自分らしく誇りを持って生きることにつながります。

 

リビング・ウィルを作成する場合は、まず、ご本人やご家族が、医療や介護チームから、終末期の状態や医療・ケアの選択肢について十分に説明を受けた上で人生観や価値観に沿った意思決定をしていくために、ご本人・ご家族・医療・介護チームで話し合いを繰り返すことが大切です。この話し合いそのものが重要で、そのプロセスをACP(Advance Care Planning)、人生会議と呼ばれます。

 

最期まで自分らしく生き抜くために、元気なうちから話し合いをしていくことを勧めします。

 

■ 抗がん剤のやめどきはいつか

 

がんの治療を目的に使われる抗がん剤は、基本はがんをやっつけるためのものですが、身体の健康な細胞も一緒に傷つけてしまうために副作用が出るというのは、みなさんもよくご存じのことだと思います。

 

体力が低下して副作用に耐えきれなくなる場合もありますから、無理をして抗がん剤をつづけていると、誤解を恐れずに言えば、逆に命取りになることもあるのです。そのため、抗がん剤のやめどきというのが、とても重要な判断になってきます。ただ、この判断は、とてもむずかしいもので、専門医でさえ、やめどきのタイミングは違ってきます。

 

「治療をやめる=死を待つだけでしょ?」と言われることがあります。でも、効かない抗がん剤を続けていた方が、命を縮める場合もありうるのも確かなことです。あのとき治療をやめていれば、やりたいことができたかもしれない……と、やめるチャンスを逃して、元気ですごせる時間を失ってしまう方をみると本当に悲しくなります。

 

もちろん、「たとえ寿命が短くなっても、最期まで戦い抜くことが人生だ!」とおっしゃる方もいます。たとえつらくても、動ける時間が少なくなったとしても、戦い抜くことがご本人にとって一番大切なやりたいことでしたら、最期まで続けるのもひとつの選択になるとは思います。

 

ですが、やはり専門医がやめたほうがいいというときは、治療の中止について一度はしっかり考えることが大切だと思います。もし納得がいかなければ、無理して続ける前にセカンドオピニオンに行って他の専門医の意見を聞いてみるのもよいでしょう。大切な時間をどう使うか、後悔のないよう考えていただきたいと心から思います。

死を受け入れること=あきらめることではない

■納得できる最期に向かう第一歩

 

抗がん剤をやめる決断をするのは簡単なことではありません。本人にもご家族にも、さまざまな葛藤があるはずです。やめるにもやめないにも、主治医とよく話し合い、納得して選択することが一番大切だと思います。

 

抗がん剤だけでなく、人工栄養など延命治療の選択も同じです。

 

積極的治療をやめる、延命治療を選択しない。どちらも死を意味することではあります。ですが、死は誰にでもいつかは訪れるものです。本当はできるかぎり避けて通りたいものではありますが、死を受け入れることで、自分らしく過ごせる貴重な時間を手にすることもできるように思います。

 

私は、死を受け入れるということは、あきらめるということとは、まったく別物だと考えています。死を受け入れるというのは、最期を迎えるその瞬間までの時間をどう自分らしく「生きるか」「生きぬくか」を、考えることなのだと思います。

 

そうやって死を受け入れられたとき、その人の最期は必ず納得のいくものになる。患者さんたちの生き方そして逝き方から、そう教わった気がします。

 

中村 明澄
在宅医療専門医
家庭医療専門医
緩和医療認定医

 

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「在宅死」という選択~納得できる最期のために

「在宅死」という選択~納得できる最期のために

中村 明澄

大和書房

コロナ禍を経て、人と人とのつながり方や死生観について、あらためて考えを巡らせている方も多いでしょう。 実際、病院では面会がほとんどできないため、自宅療養を希望する人が増えているという。 本書は、在宅医が終末期の…

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