(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸アパートで賃借人の同居人(妻)が自殺……賃貸人は、事故物件となった部屋の賃料を減額せざるを得なくなりました。この損害について、賃借人、保証会社はそれぞれ損害賠償責任を負うのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

貸借人は賃料2年分相当額を賠償

次に、賃貸物件で自殺等の事故が生じた場合の損害賠償ですが、本件事例は、都市部のワンルームアパートという事例で、裁判所は以下のように、合計で賃料の2年分相当額(ただし、中間利息は控除)を賠償すべきと判断しました。

 

「本件居室の相当賃料額は本件賃貸借契約と同額の7万円と認められるところ、本件事故の告知の結果、通常、1年間は賃貸不能であり、その後の賃貸借契約について、一般的な契約期間である2年間は相当賃料額の2分の1の額を賃料として設定するものと考えるのが相当である。

なお、実際には、本件事故の3か月後に本件居室に新賃借人が入居しているが、上記のとおり、事故直後に本件居室に入居することには消極的となることが一般的というべきであるから、原告の逸失利益の額の算定に当たり、新たな賃借人の入居の事実を斟酌することは適当ではない。」

「中間利息を控除した上で、原告の逸失利益を算出すると、次のとおり163万1877円となる。

1年目 7万4000円×12か月×0.9523(ライプニッツ係数)=84万5642円

2年目 3万7000円×12か月×0.9070=40万2708円

3年目 3万7000円×12か月×0.8638=38万3527円」

 

ちなみに、この事例では、自殺事故の約3ヶ月後に新たな賃借人が入居していますが、この点については、裁判所は以下のように述べて、損害額の判断には影響しないとしています。

 

「実際には、本件事故の3か月後に本件居室に新賃借人が入居しているが、上記のとおり、事故直後に本件居室に入居することには消極的となることが一般的というべきであるから、原告の逸失利益の額の算定に当たり、新たな賃借人の入居の事実を斟酌することは適当ではない。」

 

また、賃貸人は、自殺があった部屋の隣室と階下の部屋についても今後の賃貸に影響があると主張しましたが、この点も裁判所は以下のように述べて否定しています。

 

「本件居室の隣室及び階下の居室の賃料について減額をしなければならないという損害が生じた旨主張する。

本件建物の規模や構造に鑑みれば、本件居室の隣室の居住者が、本件事故について何らかの感情を抱くことは否定できない。しかしながら、本件居室の賃借人である被告Y1は、本件居室の使用収益に当たって善管注意義務を負うにすぎず、当然に他の居室の賃料額の減額について責任を負うことにならない。また、原告が本件居室以外の居室を新たに賃貸する場合、宅地建物取引業者において、賃借希望者に対して本件事故のあったことを告知する義務があるとはいえないから、新たな賃借希望者が本件居室以外の居室について賃貸借契約を辞退するなど、賃貸借契約が困難を生じることにはならない。」

 

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